郷土寿司プロジェクト

大根ずし

[石川県]

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こちらが金沢の郷土寿司の一つ『大根ずし』です。
僕の小中学生の時のあだ名は『大根』。大介だから大根。
そんな大根は、大人になったら寿司職人になっていました。
大根と寿司が名前になった『大根ずし』は、僕にとってはとても親しみ深い郷土寿司です。

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カブにブリを挟んだ北陸を代表する郷土寿司『かぶらずし』がありますが

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昔はカブもブリも高級品で上方の方々の食べ物でした。
その庶民版として考えられたのがこの大根ずしです。

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カブの代わりに大根
ブリの代わりにはニシンが使われています。

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『大根ずし』は、身欠ニシンと大根を、米と麹でつくる甘酒で漬けた
加賀を代表する伝統的発酵食品です。
4日ほど塩漬けにした大根と、乾燥から戻した身欠ニシンを一緒に4日間ほど漬け込みます。
『大根ずし』が根づいた背景には、藩政期から交流のある北前船(きたまえぶね)が大きく影響しています。
北前船とは、日本海を経由して北海道から江戸、大阪へと米や魚を運ぶ商船群のことです。
航海途中の拠点だった能登には、全国各地の物品が多く運びこまれました。
ニシンは特に供給量が多く、庶民でも調達しやすい魚介の一つでした。
港町には大量のニシンを保管する『にしん蔵』という倉庫がいたるところに点在しいたほどです。
身欠(みがき)ニシンとは、水揚げしたニシンから内臓や卵巣(数の子)を取り除いて干したものです。冬は『大根ずし』に使われるほか、四季を通して煮物などに使われていました。
県内の広い範囲に渡って、定着していた郷土料理でしたが、今では貴重な郷土寿司となっています。漬け方には地域性があり、金沢市では拍子切りの大根に小切れのニシン、人参などを甘酒に漬けこんでいますが、雪の多い地域では酸っぱくなりやすい甘酒ではなく、麹を使います。
肉質が柔らかく甘みがある加賀野菜の源助だいこんが良く合うからです。

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松由さんでは、毎年自家製大根ずしが漬けられているので
1,2,3月あたりでもしかしたら食べられることがあると思います。
個人的に味も大好きだし、少し涙がでそうになる優しいお寿司です。
お好みで醤油も使う方もいらっしゃるようです。

石川県金沢市にある割烹【松由(まつよし)】さんで冬に食べることができます。