すり身巻き
[高知県]
高知県には、紅白2種類の『すり身巻き』という郷土寿司があります。
(紅)すり身巻きピンク
(白)すりみ巻き大葉・かつお・えび
多様な魚が水揚げされる高知県では、
姿ずしや酢飯のだしに魚が欠かせません。
さらに、小魚などをすり身にして作るかまぼこやてんぷらも日常食です。
そんなお魚大好き高知県人は、
すり身で巻いたお寿司まで考案されています!
高知県四万十市中村にあるのが、『すり身巻きピンク』。
お正月の豪華な皿鉢でも異彩を放っています。
1973年にドライブインと宴会場としてスタートした『いこい』さん。
次第に、皿鉢やおすしの注文が増えたため1980年代に仕出し屋さんに転換されました。
2代目の芝岡博史さんによると、中村ではお祝いや法事のお返しに
おすしを配る習慣があったそうなのですが、
姿ずしに、海苔巻き、玉子巻き、黒昆布など、色合いがちょっと暗い。
ハレの日には華やかさが大事と芝岡さんのお母様がピンクの巻きずしを考案されたそうです。
地元のかまぼこ屋さんに依頼し、
高知ならではのかまぼこ『すまき』に使われるピンク色のすり身を海苔のように薄く伸ばした
通称『ゆば』で酢飯をくるっと巻いたお寿司。
華やかさがウケて定番となり、今も人気のとさずしの一つです。
そして、ピンクの二重巻きというお寿司も!
玉子、ニンジン、カンピョウなど海苔巻きの具材と、
海苔も少し巻き込むと模様と食感が出ていいそうです。
すり身巻きピンクに対して
高知県香南市にある白い郷土寿司が
『すりみ巻き大葉・かつお・えび』です。
道の駅『やす』で午前中には売り切れてしまうという人気のお寿司です。
2015年に『たつのや』を創業した竹村龍也さんは、
30代の頃、高知市の老舗かまぼこ店の惣菜部で働いていました。
特にちらしずしが人気で、店に並べるとすぐになくなるほど。
かまぼこ屋ならではのお寿司が作れないかとかねがね考えていた当時、
工場の手伝いに駆り出された際、
大丸(茹で卵を包んだかまぼこ)に使う、薄くて四角いすり身を見て閃いたそうです。
さっそく赤と白のすり身に酢飯を巻いて、紅白のおすしを作ってみました。
でもやっぱり、普段の食卓になじむほうがいい。
ということで、次は白いすり身をベースに、
細く刻んだ大葉を混ぜて、薄くのばして蒸して酢飯を巻いてみると、
大葉の緑が鮮やかで風味があり、もちっとした食感の巻き寿司ができました。
手作りのため量産ができず、販売はイベントなどに限定していましたが
大人気寿司となりました。
独立して、大葉の他、かつお節とえびの3色が定番商品に。
芯には、安芸市のジャコやオイル漬けの焼きサンマなど、こだわり具材を使っています。
すり身の中に香りが保たれるので香南市のニラやユズの皮も相性が良い!と
すり身に込めた竹村さんの創作は続きます。