鮭の飯寿司(いずし)
[新潟県村上市]
新潟県村上市の郷土寿司。
12月中旬から3月中旬くらいまでの季節もののお寿司です。
伝統の糀を使用した酒の肴であり、
お正月の祝膳を飾る季節料理でもあるのが『鮭の飯寿司(いずし)』です。
糀とご飯を床にして氷頭、塩引鮭の様々な部位の切身やはらこ、大根、にんじん、ゆず等をのせ、木桶の中で1ヶ月間発酵させて造るなれずしのひとつです。
今回、飯寿司の作り方を教えてくださったのは『千年鮭 きっかわ』の佐藤けいこさん。
きっかわで25年、自宅での飯寿司作りも含めたら、
鮭の飯寿司歴30年だそうです。
生の笹を冷凍し保管しておいたものを解凍して
塩の湯でグツグツ煮て、一枚一枚洗ったものを
桶の底に隙間なく敷き詰めます。
まずはそこに
糀と炊いたご飯を1:1で混ぜたものを桶の底に敷き詰め、床を作ります。
この時のご飯は淡白な酒米(五百万石)を使用します。
ある程度熱いうちに漬けないと、ご飯と糀がゴツゴツしてしまうそうです。
ちなみにここ、きっかわさんは元々造り酒屋さんなので糀も自家製です。
その上に薄切りした大根と人参を散りばめていきます。
野菜の薄さもポイントです。
次に塩引き鮭の身の部分を贅沢にたっぷりと入れていきます。
鮭の飯寿司はとても贅沢なお寿司です。
鮭の美味しい部位が色々と入ります。
こちらは綺麗に切り揃えられた塩引き鮭の身の部分(皮引きバージョン)。
飯寿司を漬け込み始める前に
もちろん全ての下準備をしてから漬けるわけですので、
塩引き鮭の皮をむいたり、骨を抜いたり、切りつけるという仕事が
事前になされています。
切りつける前の鮭の身(内側)
切りつける前の鮭の身(外側)
こんな具合にお腹の部分や尻尾側の身の部分は敢えて皮を引かず、
皮を付けたままにすることで、完成した飯寿司を食べる際に様々な部位を様々な食感と見た目で楽しめるようにおもてなしの気持ちが込められていました。
鮭のカマの部分。
鮭の腹身部分。
鮭の皮。
そのまま切って入れるのではなく、
茹でて皮をくるっと丸めることで、これもまた、見た目と食感にアクセントが加わります。
鮭の頭の部分。
あらかじめスライスしておきます。
ゆずの皮。
細かく刻みすぎないことで、黄色の色バランスを強調し
食中の香りも程よく演出されます。
水ハラコ。
ハラコの加工をする際に醤油漬け用にまわらなかったハラコを冷たい水でしばらく晒して、硬く引き締めらたものです。
パラパラと散りばめます。
1段にひとつまみだけ塩を加え、
最後に酒をかるくふりかけます。
これで1段目が完成しました。
この上にまた笹の葉を敷き詰めて、
ごはんと糀を混ぜたものを入れて、先ほどと同じ工程を繰り返し
合計7回、7段積み重ねます。
このお部屋には、
滋賀県の菌(くさびら)神社の菌の神様が祀られていました。
だいぶ上まで、飯寿司が重なってきました。
佐藤さんは飯寿司を作りながら、僕にこっそりお話してくれたことがあります。『私は、この会社に勤めてから、ありがとうが心から素直に出るようになったんだよ。』と。
職場を通じて、しかも仕事をしながらそういう気持ちになっていったことは、会社教育良さだけでなく、命を扱っているからこその、感謝の現れだと思います。『きっかわ』さんという企業に対してとても感謝していることを何度もお話してくださいました。
最上段の縁(フチ)の部分には魚は置きません。
この後重石をのせて1ヶ月ちょっと。
水分上がってくる時にできる産膜酵母で
縁部分の魚が黒くなってしまうからです。
完成しました。
真上から見るとこんな感じです。
落し蓋をして、重石をのせて1ヶ月から40日ほどの間待つ、
『なれずし』の一つです。
最初は12kgの重りでじっくりと圧力をかけていきます。
その後15kgの重りに変えてさらに押していきます。
産膜酵母で覆われた汁が上がってきてから飯寿司を取り出します。
この鮭の飯寿司、冬季限定で、
『千年鮭 きっかわ』さんにてご注文いただけます。握り寿司(早寿司(はやずし))と違い、これだけの手間と1ヶ月以上の調理時間のかかったお寿司、是非お試しくださいませ!