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キャラウェイ・Caraway

[スパイス・spice]

【学名】Carum carvi
【名称】キャラウェイ
(日本名)姫茴香(ヒメウイキョウ)
(英名)Caraway
(中国名)葛緩子
【分類】二年生草本
 目:セリ目
 科:セリ科
 属:ヒメウイキョウ属
 種:ヒメウイキョウ
【原産地】ヨーロッパ東部、アジア西部。トルコ西部のカリア
【主産地】デンマーク、イギリス、ドイツ、ノルウェー、オランダ、ポーランド、フランス、ルーマニア、アフリカ

フランス語では、『牧場のクミン』
英語では、『アメリカのクミン』、『山のクミン』と呼ばれています。
外観もクミンとかなり似ています。

【香味特徴】
スパイスとして主に使用される種子は、
爽快な香りが特徴で、噛むと穏やかな甘さとスースーした感じ、
若干のほろ苦さが感じられます。
この香りの主成分の一つはカルボンです。
純粋なそれ自体がキャラウェイの香りを持っています。
精油は果実を砕いて水蒸気蒸留して得られますが
精油収量は3〜6%で、
主成分はカルボンが精油全体の50〜60%、
リモネンが20〜30%を占めています。
生で食べられる若葉は、
パセリやニンジンに似た香味を持っています。

【含有成分】
カルボン
リモネン
カルベオール
ジヒドロカルボン
ジヒドロカルバオール
フルフラール

【薬理作用】
古代ローマでは、消化を助ける働きがあるとして食後にキャラウェイシードや
キャラウェイ入りのケーキを食べる習慣があったそうです。
胃痛、鼓腸、嘔吐、下痢などの胃腸障害に特に効果があるようです。
油っこいものを食べたあと、種子をそのまま食べれば
口中清涼剤や消臭剤にもなり、
精油はうがい薬としても使用できます。
インドでは精油を石けんに入れたりして皮膚病の治療に用いられています。
消化促進作用
駆虫作用
駆風作用
収れん作用
催乳作用
口腔清涼作用


【料理適性】
〈パン、クッキー、ケーキ、サラダ、ドレッシング、マトンなどの肉料理、チーズ料理〉
シードはそのまま食べてもおいしく食べられます。
若干、酸味に近い芳香成分を持っているので、サラダやドレッシングなどの
酸味のあるお料理には合います。
ドイツのザワークラウト(塩漬けキャベツ)には欠かせないスパイスです。
マトンなどの肉の矯臭作用もあり、シナモンとブレンドして使用するとより高い効果が得られます。
焼くと香ばしい香りがするので、特にライ麦を原料とする種々のパンに用いられるほか、粉末はケーキ、クッキーなどの風味付けにも良いです。
キャラウェイチーズというものがあるくらい、
チーズ料理にも良く合います。
リキュールにも使われ、
ドイツやオランダのキュンメル酒、
スカンジナビアのキャラウェイブランデーなどの
重要な構成成分でもあります。
精油は、ソーセージ、缶詰食品、ソース等と広く加工食品分野で使われています。

【エピソード】
中世ヨーロッパでは魔除けや媚薬として利用されていました。
現在でも家畜のエサにキャラウェイシードを入れておけば、
家畜が逃げないという迷信が残っています。
明治・大正時代に流行した『カルルスせんべい』というお菓子には、
キャラウェイシードがついていたそうです。

【語源】
学名のCarum → Caraway の古代ラテン名 Careum の変形。
アラビアでカラウィア(karawiya)から名付けられました。
学名のcarvi →キャラウェイが発見された小アジアの一つの地区の名前で、
カリア(caria)からとの説もあります。

【栽培】
種子を蒔いてから2年目に結実します。
若葉は1年目から収穫してもOK。
日当たりの良い腐植質に富む粘土質の土壌に、
4月中旬〜5月種子を蒔きます。
耐寒性があり、寒冷地ではやや注意が必要ですが、
基本的には屋外で越冬できます。
植え替えを嫌うので、最終的に株間が40〜50cmになるように間引きをしていきます。
種子の収穫は、種子が茶褐色になってから行いますが、熟し過ぎると果実が破れて種子が飛び散ってしまうので注意が必要です。
日中よりも早朝か夕方に収穫し、陰干しします。

【産地による品質評価】
キャラウェイの芳香成分は、リモネンとカルボンですが、
近年合成品が多くなり、天然のキャラウェイ油が暫時市場から減少する傾向にあります。
カルボンは同じセリ科のディルの主要芳香成分でもあり、
キャラウェイよりも含有比率が少ないため、精油評価の基準となっています。
精油の含有量は産地によって若干変動があり、
オランダ産4〜6%
ドイツ産3〜6%
インド産5〜8%
ハンガリー産4〜9%
となっています。
香気の面ではオランダ産が優れているようです。
キャラウェイ油の偽和物としては、
キャラウェイ油にオレンジ油中の成分であるリモネンを加え増量したりします。
キャラウェイシードの粉末では、キャラウェイ油を抽出した粕、茎、あるいはセリ科植物のシードを粉末にしたものやインド産ディルなどが用いられたりします。

【古代ギリシャにおけるキャラウェイ油の活用法】
古代エジプトでは、医薬、化粧品、遺体の防腐保存、調味料などに使用されていたことが、『エーベルス・パピルス』に記録されています。
この中にキャラウェイやシナモンなど800種類の治療薬が挙げられています。
古代ギリシャでは、西アジアの習慣を取り入れ、
パンにキャラウェイシードを用い、医薬品としても用いていたそうです。
ギリシャの医者ディオスコリデス(Dios-corides:紀元40〜90年)は、
著書『博物学』の中で、キャラウェイ油には、
貧血症で顔色の悪い女性に強壮の効果があると記載しています。