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ワインボトルの底がくぼんでいる理由。

[ワイン]

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ワインボトルの底のくぼみは、英語でPunts(パンツ)と呼ばれています。
グラスにワインを注ぐ時に親指を入れて支えやすいようにと言われていたり、
ワインの量をケチるために上げ底をしているという嘘が出回っていたりしますが
本当の理由は、二つあるようです。

一つめの理由は、
ワインはボトルの中で、日々熟成を行っていて
この熟成が続くと、タンニンやポリフェノールなどの成分が結晶化してボトル内に溜まってきます。
ようするに澱(おり)と呼ばれる沈殿物です。
ワインを保存しておくと、この澱がくぼみに沈んでいきます。
そうなることで、ワインを注ぐ時に澱がくぼみに留まっているため、グラスに入ってこないというわけです。
沈殿した澱は人体に害はありませんが、口に入れるとザラザラしたり苦味があったり、
あまり心地の良いものではありません。
そういうわけでソムリエさんなどは、デキャンタ(ワインを移し替えるフラスコ瓶)を利用していますね。
瓶内のワインは移し替えの作業中発生する対流が澱をワインと混ぜ合わせてしまいますが
瓶の底を凹ませておくと、その対流が起こりにくく、上手く澱とワインを分離させることが出来ると訳です。

もう一つの理由は
『ウオーター・ハンマー現象』を防ぐ為。
一般的な瓶は底が大きくて、口が小さい為、
底が平らな瓶をテーブルなどに強く叩きつけるように置くと
底の面積の部分に相当する衝撃が液体の中を伝って、口の部分にエネルギー負荷を与えます。
この現象は居酒屋さんなどでもたまに見かけたことがあります。
店員さんがビールをドン、と置いたら 王冠がスポン!みたいな。
そういう危険を回避する為に、エネルギーを分散出来るように工夫されたのが
ワインのボトルの底の凹だそうです。
ガス圧の高めのシャンパンやスパークリングワインの瓶はさらに窪みが大きいのもそういう理由です。

シャンパンの高級品、ルイロデレール社の『ルイロデレール・クリスタル』というシャンパンだけは例外で
このChampagneは底が平らです。
世界でも一際、繁栄を極めたロシア王家・ロマノフ家の御用達シャンパンだったクリスタルは、
皇帝の要請を請けて特別なボトルを使うことになったそうです。
ロマノフ家は、その豊かさ故に皇帝が暗殺されることがとても多く、
それを恐れたアレクサンドル2世は、
シャンパンの瓶の底に危険な物を隠されたりしないように、毒物などを混ぜられないように
既存の色付のボトルを中身がはっきり確認出来る透明なボトルに変更するように注文。
その慣わしが今日でもそのまま残されていて、ルイロデレールの最高級品は
瓶の底が平らで、紫外線の影響を受けやすい透明ボトルがわざわざ使われています。
飲みたくなってきますね。