切り干し大根
大根は野菜栽培量のトップの座を占めて、
日本の食卓には長年、何かしらの形で存在している野菜です。
切り干し大根はその保存食品版です。
千切りや薄切りにしてそのまま天日乾燥、もしくは乾燥機で乾燥させただけの
代表的乾物野菜。
一般的に、大根を保存・加工した製品を総称して干し大根と言いますが、
関西方面では千切り大根、関東では切り干し大根と呼ばれています。
どちらも同じものです。
生の大根を天日乾燥すると
タンパク質、食物繊維、カルシウムが多くなり
生の大根にはない価値が大きく加わります。
干し大根は保存食品として歴史は深く、
平安時代には干し大根を塩と糠で漬けるたくあんが誕生。
これが元祖となって、
室町時代には点心として、食物辞典『木朝食鑑』にも名があるほどです。
切り干し大根も幅広い世代に親しまれている人気食材です。
日本全国在来の大根があり、種類も多く、
日本の北から南まで、大根は通年収穫でき、
切り方、戻し方、保存方法も様々です。
ちなみに、切り干し大根は宮崎県で多く生産されています。
昔は千葉県房総半島が主産地でしたが、
その後、愛知県の渥美半島に主産地が移り、
明治末期には、愛知県の農家の次男、三男の多くが宮崎に移住したことから
主産地は宮崎県に。
戦後、愛知県では自動車、楽器、陶芸などの産業が盛んになるにつれて
農家さんが急減したこともあり、宮崎県、長崎県などへ
産地移動がさらに進みましたが
近年は、渥美半島での生産が復活してきているようです。
切り干し大根の原料は
アブラナ科の二年草、青首大根であることがほとんどです。
でんぷん質が多く、水分が少ないので
生で食べるよりも乾燥させることで糖化が進み、旨味も増すからです。
9月に種を蒔いて、11月下旬頃から収穫できるほど成長が早く
スが入りにくく、病気にも強いのが切り干し大根として支持される理由です。
青首大根は、1月〜2月の真冬が最盛期です。
大根は切り方によって食感が大きく変わります。
大根を丸ごと乾燥させた丸干し大根、ねじ干し大根。
乾燥してから小口切りにした花切り大根(徳島県)、小花切り大根、割干し大根(岡山県)、丸切り大根(香川県)、
茹で干し大根(長崎県)、ゆがき干し大根、寒干し大根(岐阜県)、凍み大根へそ大根(宮城県)など
日本各地にさまざまな種類の切り干し大根があります。
切り干し大根の製造方法は
まず、収穫した大根を水洗いして土を落とします。
葉の部分と尾の部分を切り落とします。
千切り用に刃の付いた回転式のスライサーでカットするところもあれば、
包丁で手作業で切るところもあります。
外気温が5℃前後の冬の寒い時期で、寒風が吹く日に、
畑に木材で柵を作り、その上にむしろやよしず、網を張り、
大根を広げて、日光とと寒風で天日干しをするところもあれば、
乾燥機で、短時間で一気に完全に水分を取り、カビが発生しないくらい乾燥させ、白いままに完成させるところもあります。
天日に比べて、水分の含有率が少ないため、軽く感じますが、
水戻しすると、元のサイズになりビックリします。
大根は『日本書紀』に
於朋泥(おほね)の名で登場し、これが大根(おおね)となり
だいこんとなったそうです。
ちなみに、
僕は小学3年生から中学3年生まで
あだ名が大根(だいこん)でした。
大介だから大根。。。。。
誰が言い出したのかは忘れましたが
いまだに、当時の同級生に会うと大根と呼ばれます。。
そんな大根の原産地は小アジアから地中海東海岸とされていて
日本には記紀の時代に中国を経て伝えられたとされています。
中国の大根は大型で水分が多い華南系と、
皮に色があり、でんぷん質が多く耐寒性のある華北系があります。
この2系統とも日本に伝来し、時代と共に交雑が進み、
各地の地質や気候に合う品種が誕生。
かつては数百種類あった品種も、
1980年代に華北系の子孫、愛知県渥美半島地方の宮重大根を改良した
青首大根が人気を集めて、今日に至っているようです。
栄養と機能成分について
生よりも水分が減った分だけ成分が凝縮されて驚くほど多くなります。
切り干し大根の場合は94%が水分で、各成分は生の大根の15倍ほどにもなります。
カルシウムは生の大根の15倍だから、
乾燥した分、凝固されて、生の大根よりもカルシウムが23倍、鉄分は49倍に!
生の大根では、消化酵素のジアスターゼがありますが、
切り干し大根はジアスターゼが無くなります。
がその分、ミネラル分が増える感じです。
生と干しの食べ分けを意味を持ってできますね。
切り干し大根に含まれる食物繊維は100g中20.7g
生の大根のやく15倍だから、水分が減った分だけ凝縮したに過ぎないです。
生の大根100g分の食物繊維1.4gは、
切り干し大根なら21g弱でとれます。
生の大根を100g食べるのは大変ですが、
切り干し大根なら1食に10〜20gでOK。
少ない量でたくさんの食物繊維がとれるので
食事量の少ない老人や子供の栄養補給には最適です。
不溶性の食物繊維が多く、セルロースやリグニンを含んでいます。
コレステロールの低下作用や腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)の改善作用があり、動脈硬化やがんの予防に良いと言われています。
乾物は、乾燥することによって細胞が萎縮し組織が破壊されるため、
大根のもつ酵素が働き、新たに甘み成分が形成され、独特の歯ごたえも出ます。
甘みは、大根に含まれるでんぷんから糖が生成されて4割増しになります。
水に長く漬けておくと水分を吸収し過ぎて、歯ごたえが悪くなるだけでなく
水溶性成分が抜けてしまうので噛み切れる程度に戻ったらすぐに水からあげることをおすすめします。
切り干し大根の場合は、糖分が戻し汁に溶け出したあまーい戻し汁も
是非捨てずにご利用ください。
30分間水に浸すと60%ほどの糖分が流出します。
お味噌汁やシチュー、煮物や蒸し物など。
お水と砂糖の代わりに利用できます。
酢飯屋で使用している切り干し大根は、
岩手県 陸前高田発『太切り 干し大根』です。
この絶妙な太さがポイントです。
100kgの大根を4kgまで乾燥させて
水分量7%までにした逸品。
3時間ほど水戻ししたら、ぎゅっと絞って、
軽く塩もみするだけで浅漬けに。
土佐酢やポン酢に漬けるだけでも文句の無い漬物に!
オイルや、ドレッシングとの相性は当たり前に抜群。
お肉料理に添えて、お口直しにも喜ばれます。
串で刺して、おでんの具材にしても煮崩れしません。
太く切られた、切り干し大根を水に戻すと
その食感だけでなく味わいも香りも大根以上に大根です。
20gを水戻しして、ギュッと水分を絞った後の重さは80gほど
約4倍になります。
岩手県 陸前高田発『太切り 干し大根』のご購入は、
神楽市場ホームページよりどうぞ。
http://www.sumeshiya.com/ichiba/item/kiriboshi.html
切り干し大根(高知県 ファームベジコさん)