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伊吹大根(いぶきだいこん)と伊吹久次郎(いぶききゅうじろう)そば

[すし・sushi料理青果]

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2020年1月15日
滋賀県米原(まいばら)市 に
日本蕎麦栽培発祥の地があるということで
さらに、この地の在来種の辛味大根『伊吹大根』もあるということで、
しかもその最高のセットをどちらも生産し、食べさせてくださるお店があるということで
『久次郎(きゅうじろう)』さんに行ってきました。

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例年、この時期は雪深く寒いこの地域で育つ伊吹大根。
寒いと大根の葉が根を守る様に伸びてしだれ巻いてくる姿がロゴデザインになっています。

伊吹大根とは、
滋賀県の最高峰である伊吹山の麓にある大久保集落を中心に古くから作り継がれてきた在来種の伝統野菜です。
長さは20cmくらいと短く、お尻が丸い寸胴型で、
曲がった尻尾がついていて、地元では、ねずみ大根、まむし大根とも呼ばれてきました。

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江戸時代には、全国的にも知られた『伊吹大根』でしたが、
伊吹山麓は石灰質の痩せ地であったため、
米作には向かず、ソバ、サツマイモ、ダイコンといった備荒食糧、根菜類の栽培が行われてきました。
そうした背景から、江戸時代から昭和中期までは、伊吹山の三合目から五合目あたりの山の中腹に
ソバやダイコンが栽培され、遠くからそば畑の白い花が見えたと言われています。

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残念なことに戦後の高度経済成長期に食料生産・流通の仕組みから取り残され、徐々に姿を消し、『幻の伊吹大根』となってしまいました。
近年になって、地元の住民が中心となり、純粋種の復活をめざして栽培を増やしています。
その中心となっているのが、
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いぶきファーム代表の谷口隆一さんです。

栽培の始まりは定かではありませんが、1000年以上前から栽培されて、古くから存在が知られこの地の名産品となっていました。
その様子は江戸時代に刊行された書物からうかがい知ることができます。
1697年(元禄10年)に出版された我が国最古の体系的農書である『農業全書』には
『伊吹大根』が紹介されています。

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また、江戸で1713年(正徳5年)に刊行された百科事典『和漢三才図絵(わかんさんさいずえ)』にも、
『江洲ノ伊吹相洲ノ鎌倉共二鼠大根ヲ出ス形短而尾有味甚辛ク・・・・・』とあり、
江戸時代末期(1821年(文政4年))につくられた植物図鑑である『本草図譜(ほんぞうずふ)』においても、
『葉はダイコンに似て痩せ根も又細くして長さ一尺余上細く下太く根の先を切たる如くなることマムシの尾に似たり
唯細きを垂ること鼠の尾に似たりこれ全てダイコンの類にしてニンジンの類にあらず時珍ニンジンの条に入るは
誤なるべし』と伊吹大根について記されています。

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他にも、
1697年(元禄10年)に刊行された食物本草書『本朝食鑑(ほんちょうしょっかん)』にも
『鼠大根というものあり短かく円く豊肥して其尾細く長し故に名く其味極めて美なりといへり』と書かれていて
図は三色刷りで印刷されています。
伊吹大根は、少なくとも江戸時代には全国的にも名が知られた大根だったと言えます。

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彦根藩 井伊家に伝わる文書のなかに、伊吹山を描いたものが2点伝えられています。
『元文己未(1739)一二月写』銘のある『伊富貴山之圖(いぶきやまのず)』と、
年不詳の『伊吹山図』です。(彦根城博物館蔵)。
絵図は、滋賀県側の伊吹山をほぼ全面に描き、山麓には『江戸道』と記された北国脇往還(ほっこくわきおうかん)が描かれています。
絵図には、小山や谷、尾根、河川などの自然環境が描かれ、歴史的景観として、まず、
山岳信仰に関連する社寺、行場と考えられる巨岩、奇岩、滝などがあり、
山頂の弥勒堂(みろくどう)では、堂前で拝むように見える先逹(せんだつ)と、
それに続く信者や山頂から東(御来光)を眺める人が描かれています。

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このほか、京極氏の城跡、集落、道。
田畑、石灰窯などの生産施設などがあります。
干し草を下ろす引き坂と人が描かれていて、
山での草刈りが、18世紀にはおこなわれていたことが確認できます。
絵図から江戸時代の伊吹山の景観を復元すると、山麓の樹林帯より上に
大根やそばの畑があり、その周囲も草刈り場として草原が広がっていたことがうかがえます。
一合目付近から上が草原、さらに、大平(おおひら)の上に畑の区画が描かれ、『大根畑』とあります。
大平は、三合目の旧ホテル前のオカメガハラから四合目斜面のことと思われ、
辛味の強い伊吹大根とよばれる特産種が栽培されていたようです。

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山復や山麓の樹間からは、太平寺や長尾寺、松尾寺などの伽藍(がらん)が見え隠れしていたことでしょう。
同時期に編纂(へんさん)された『近江輿地志略(おうみよちしりゃく)』(1734年)には
『弥勒禅定(みろくぜんじょう)(修行)の人のみにあらず、薬草をとる人草木を商う者、四月の初より八月の候まで登山の諸人たえず』と、
江戸時代の伊吹山登山の様子が記されています。
西側斜面の太平寺より上の斜面には『蕎麦畑』が描かれています。
そばは、伊吹山が発祥の地とされます。
伊吹大根は蕎麦に最適の薬味です。

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こちらが現在の伊吹山(いぶきやま)です。

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伊吹大根は、サイズによって
水分量や辛さ、すりおろすか、切るかによって味わいや風味が異なります。
地元の大久保集落では『峠の大根』として古くから栽培されてきました。
大根と言っても、一般に販売されているような大根の容姿ではなく、根の部分は太短く丸みを帯びた

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寸胴型で、せいぜい20cmほどの長さにしかならない小ぶりの大根です。
葉のフチと根の首が赤紫色を帯びていることも特徴です。
葉には毛も多いです。

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寒さに強く、砂礫地でもよく育ちます。
根の先端がねずみの尾のように細長くなることから、
『ねずみ大根』と呼ばれたり、
急に尻尾の部分が細くなるところから、『マムシ大根』とも呼ばれていたそうです。


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伊吹大根は、小さいほうが辛いです。
最大の特徴とも言えるのが、普通の青首大根の2倍とも言われる辛味の強さです。
辛味成分はイソチオシアネート(Isothiocyanate)。
伊吹山の山麓はそば発祥の地として知られていますが、その薬味として絶品で、
江戸時代には蕎麦の薬味となる大根として評価されていました。

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辛味が強いだけでなく、高地で育つことから絶妙な甘み成分も含まれているので、
そのバランスの良さが評判に繋がったようです。
生育が遅く、ゆっくり育つのも特徴です。

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脂ののったブリの握り寿司とこの伊吹大根の辛味との相性が抜群でした!

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単におろし専用の辛味大根というだけではなく、
一般の大根よりも水分が少なく、肉質が緻密で澱粉含有が多いことから、
煮崩れしないため、おでんなどの煮物にも使いやすい食材です。
大根の天ぷらを作っていただきましたが、ホックホクでした。
さらには、歯応えのある食感が絶妙で、古くから漬物用としても重宝されています。
漬物にしてもしゃきしゃきとして、堅めの田舎漬けとして非常に個性的な漬物になります。


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葉のある上部よりも、根っこに近いほうが辛いのは、他の大根とも一緒です。
それから、皮ぎしが一番辛いです。
蕎麦を食べる時には、わさびいらずの辛さです。

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サイズ別、辛さ違いの食べ比べをさせてくださいました。
小さい伊吹大根のピリッピリの辛さが、食欲を掻き立てます。

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1300年の歴史がある、日本蕎麦栽培発祥の地、伊吹の在来種の蕎麦です。
右側が『伊吹久次郎(いぶききゅうじろう) 蓬(よもぎ)そば』。
どちらも自家製粉し、すぐに讃岐の製麺屋さんへ送り、
蕎麦にしてもらい、送っていただいているそうです。

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伊吹山は古くから信仰の山として崇められ、多くの修行僧が訪れ
伊吹山護国寺が形成されました。
そばは、中国北部から朝鮮半島を経て日本に渡来して、この場所でのそば栽培は、
平安時代から鎌倉時代にかけて伊吹山中腹に開かれた太平護国寺で始まったものとみられています。
秋口になると、遠く琵琶湖の対岸からも伊吹山中腹のそばの白い花が見えたそうです。
江戸時代には彦根藩士で、俳人の松尾芭蕉のお弟子さんの森川許六さんが編んだ『本朝文選』(1706年)に
『伊吹蕎麦。天下にかくなければ。辛味大根。又此山を極上とさだむ。』
と記載されるなぢ、、上質なそばの産地として古くから知られていました。

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江戸時代に描かれた『伊富貴山之図』には、そば畑や伊吹大根の作付け場所が記されています。
東西文化の結節点、伊吹の地(現:米原市)では、
悠久の時を経て、高い品質を備えた在来種伊吹そばが現代に受け継がれています。

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期間限定ランチとして、滋賀県の食材を使用し
氷魚(ひうお)と伊吹蕎麦の寿司重』をご提案させていただきました。


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いぶきファームの谷口隆一さん、お忙しい中、美味しい美味しい
伊吹蕎麦と伊吹大根、日本一濃厚なよもぎ餅、ご馳走さまでした!
魅惑の伊吹蓬(いぶきよもぎ)については、
また次回、詳しくよろしくお願いいたします!