寿司とお酒のペアリングコース
酢飯屋のディナーのコースに
20,000円ペアリングコース(お通し・お寿司15カンにペアリング酒15種・お椀)
というものがございます。
岡田大介が、
酢飯屋のお寿司それぞれに対してどのお酒をどのような温度で
どのような酒器でどのように提供するべきかを、何度も何度も試し、
お酒に精通した方々から受けた良い影響を
自分なりに解釈し、分解し、自分らしいスタイルでご提案させていただきます。
(※ペアリングコースは2名様〜4名様でのご予約の方に限ります。)
酢飯屋では、日本酒をご注文いただいたお客様に
おちょこをお選びいただくことを基本としております。
このペアリングコースでも
お酒の種類によっては、お客様にお好きなおちょこをお選びいただく場合がございます。
様々な作家さんによるおちょこや
自作の江戸切子、特注のベク杯、
ガラス、陶器、磁器、漆器、石器など素材の違いでお酒の味わいも変わってきます。
基本的にはこちらの平杯を使用します。
大杯と小杯で、口あたりから、舌にお酒が当たる位置なども考え
使い分けします。
銅のチロリ、錫のチロリ、陶器の徳利、ガラスの耐熱徳利、鉄器
どの道具でお酒を温めるかによっても
お酒の味は変化してきます。
これは実験を繰り返して相性を知る以外、方法がないんです。
だから繰り返し実験をします。
チロリは、はじめから温めておいたほうが良い場合と
そうでない場合もあります。
そんなに熱燗って繊細なものなんです。
ご提供する際におちょこが冷えていると
お燗したお酒を注いだ時に温度が下がってしまいます。
わざとそうする場合もあれば、おちょこもしっかりと温めておくこともあります。
銅のチロリと錫のチロリでは
お酒の温度の上がり方も違います。
この違いを上手に利用するのもたくさんの経験が必要になります。
お鍋の中のお湯の温度とチロリの中のお酒の温度は
常に気にし続けます。
体内でのアルコールの分解を助けるために
常温のお水をたっぷりとご用意しています。
口の中をリセットする意味も含め
お寿司1カン、お酒1杯ごとにお水を飲むことをオススメいたします。
お寿司の説明とお酒の説明と相性のお話を簡単にさせていただきます。
ベストなタイミングでお食事いただけるように
すべての時間を逆算して準備しています。
温度と時間が大切ですので
お話中に割り込んでの説明になってしまうことも多々ございます。
どうかご了承くださいませ。
温めたお酒の温度を急激に落とすことで
尖っていた味が丸くなったり、香りが穏やかになったりして
ペアリングしやすくなるお酒もあります。
おちょこの中にあらかじめおろし生姜を入れておくこともあります。
寿司とお酒だけで合うのに、生姜を入れることでさらに合う!
そんなペアリングがベストな場合にはそうします。
『チロリデキャンタージュ』もします。
デキャンタージュはワインの世界ではよくされていますが
日本酒でも効果が出ます。
冷やし過ぎた日本酒をデキャンタージュすることで、
お酒の温度を上昇させる効果。
新酒などは、デキャンタージュして空気に触れさせることで
微妙に熟成を促進させて香りを華やかにして、
味の複雑さやまろみを引き立たせる効果があります。
ボルドーグラスで飲むのが一番香りを楽しめて味も美味しいお酒もあります。
おちょこに、ある液体を忍ばせておき、
温めたお酒を熱々の急須で注ぎ割ると美味しいお酒もあります。
飲む直前に混ぜるのがポイントだったりします。
極力、氷温に近い温度でご提供するために
片口自体を近々に冷やしてお出しすることもございます。
蓋物の漆器に小杯を入れて
熱湯を注ぎ入れます。
蓋をしておちょこを熱々にしておきます。
お客様が手で持てるギリギリの熱さでおちょこを熱くしたいのには意味があります。
熱々のおちょこに、冷えたお酒をそろりと注ぐと
その温度差でお酒がまろやかになるというのと
唇に当たっている部分は熱いのに、
口に入ってくるお酒が優しい冷たさ。
この温度差がお寿司の味を引き出してくれることもあるのです。
こちらは『熱燗熟成(あつかんじゅくせい)』をしているところです。
片手でも包み込めてしまうほどの小さな徳利に
かなり熱めのお酒を注ぎ、すぐにお猪口で蓋をします。
テーブルにお出ししてから1分ほど、
そのままお待ちください。
お酒が香ばしく、炊きたてごはんのおこげのような風合いに仕上がります。
1分ほど経ったら、おちょこをはずし
ご自身でお酒を注いでください。
土物のおちょこで飲んでいただきたいお酒もあります。
こちらで決めつけさせていただきます。
お猪口やチロリだけでなく、徳利や急須の温度管理も大切です。
最終的におちょこの中で何度になっているのかを計算してお燗をつけます。
完全に美味しい組み合わせがみつかったとしても
また他の組み合わせでそれと同じかそれ以上が出てくるかもしれないと考え
探求をやめません。
スパイスやハーブと日本酒を合わせることは
これからスタンダードになっていくと思います。
それだけで美味しい日本酒を、美味しく無くするのはよろしくありませんが、
それだけで美味しい日本酒に、これとこれが合わさったらお互い引き立て合っていくのなら
ペアリングは追求すべきジャンルであり
ペアリングを超えたNEWが生まれる瞬間こそがこの世界に面白みでもあります。
口のなかで一体化するのがペアやシェアと表現するならば、
NEWというのは、
口の中で合わさり合って、想像出来ない新しい味がポンと出てくること。
キュウリの千切りをおちょこの中にスタンバイ。
爽やかな青さが日本酒と合わさることでさらに引き立ち、
脂の強いお寿司をさっぱりとさせてくれます。
トロリとまとわりつくようなお酒、シュワシュワ弾けるお酒。
澄んだ水のようなお酒、白濁したお酒。
見た目ではわからない、日本酒それぞれの味わい。
ご自身がどう感じるか。
僕はこの組み合わせを美味しいと思ってお出ししています。
またおちょこに何か入ってますよ。
香るもの?食感?味の微調整?
かんぴょう巻きという、ほぼ完成した一つの寿司に対して
そのシンプルな完成した寿司に挑むようにして
ペアリングを追求していきます。
このお寿司と、このお酒を口に含むに当たり、
どのタイミングで塩分を追加するかで
そのペアリングの締り具合が変わります。
海苔のペアリングがこれまでで一番難しかった。
海苔と日本酒。
合いそうじゃん!
って簡単なものではありませんでした。
海苔の苦味までも綺麗に引き出してしまう日本酒。
この苦味を感じず、海苔の味と香りを一番引き出すタイミングで
お酒を口に含む。
咀嚼して、どの段階でお酒を含むかでもペアリングは変わってくることがわかりました。
納豆巻きのペアリングはかなり時間がかかりました。
試行錯誤とはまさにこのこと。
納豆菌が元気に動く温度帯も加味した熱燗をつけます。
同じ条件で楽しまれても
感想は人それぞれ。
全員が笑顔になった時、なんとも言えぬホッとした気持ちに包まれます。
僕の寿司ペアリングはだいぶ自由に合わせています。
お寿司だけで食べて美味しいとお喜びいただいていたものを
さらに次のステージに持ち上げてくれるのがペアリングなわけですが
自分で考えたお寿司に自分が合うと思ったお酒を合わせることは
誰も制限することができないからです。
おちょこにオイルが忍ばせてあることだってございます。
お寿司だけで食べて美味しい
このお寿司と一緒にこれを飲むとさらに美味しい
このお寿司と一緒にこれをこのタイミングでこれと一緒に口に入れると美味しい
だいたいの感覚で合ってしまうものも中にはありますが
適当に合わせるのではなく
しっかりと味見を繰り返し生み出された組み合わせ。
お料理そのものに熱燗を注ぎ完成するものもあります。
加水することで飲み疲れしないお酒を作りだし
お食事に緩急をつけていくことを心がけています。
お寿司とお酒のペアリングだけでなく
お茶やジュースの世界もまた同じです。
お酒は何のために飲むものだったのか?
それを改めて考えれば、このスタイルの意味がわかると思います。
徳利の良さも忘れてはいけません。
徳利に入れておいたお酒の変化
徳利ならではのゆっくりと落ち着いた温度変化。
少しずつ開いてくるお酒の温度開花。
徳利でお酌し合う日本文化。
あまり頭で考えず、まずは体で感じてください。
どうして美味しく感じたのかはそのあとで分析しましょう。
『新しい寿司体験を』
酢飯屋の寿司とお酒のペアリングコース は
2020年3月にて終了いたしました。