きちじ・キチジ・吉次・Sebastolobus. macrochir
お魚の座学
動物界 Animalia
脊索動物門 Chordata
脊椎動物亜門 Vertebrata
条鰭綱 Actinopterygii
カサゴ目 Scorpaeniformes
カサゴ亜目 Scorpaenoidei
フサカサゴ科 Scorpaenidae
キチジ属 Sebastolobus
キチジ Sebastolobus. macrochir
『きんき・キンキ』という呼ばれ方で流通していますが、
正式名称は『きちじ・キチジ』です。
もともと宮城県での名称です。
が、
通称『きんき・キンキ』という呼ばれ方のほうが世間に浸透しています。
アイヌ語では『フレソイ』
中国語では『大翅鮶鮋』
ロシア語では『Шипощёк длинноперый』
です。
日本列島東部沖各地、サハリンから千島列島のオホーツク海およびベーリング海の深海。
日本では特に、北海道南東沖の深海に生息しています。
体は比較的細長く、赤いです。
鮮度が落ちると退色し、白っぽい黄色に近くなります。
眼が大きく、前部に凹部があり、両目の間隔は狭いです。
頭の両側の、目の下から頬を通る長く突出した筋があります。
カサゴ目ということもあり、口も大きいです。
背ビレは第一と第二に分かれ、第一背ビレの後部に大きな黒斑があります。
胸ビレは大きく、斧のような形状をし、下部は肥厚し突出しています。
魚体の色が赤く目が大きいこと、
体型や、地方名が似ていることなどから、
キンメダイ目キンメダイ科のキンメダイと間違われがちです。
が全く別の白身魚です。
キンメダイに目の下の筋はなく、胸ビレ、背ビレは小さいです。
背ビレは分かれず、黒斑もありません。
同じく赤いサンコウメヌケ（Sebastes flammeus）などのメヌケ類がいますが、
サンコウメヌケは個体により白っぽいものもいます。
メバルは同科別属の魚になります。
水深150〜1280mの大陸棚斜面に棲息し、特に水深400〜600mに多いです。
産卵期は7〜10月で、30万個程の卵を生みます。
主に魚、イカ、エビ、カニ、ゴカイ類等を捕食します。
北海道、東北地方では高級食用魚として漁獲されています。
トロール網、底刺し網などが使われ、
網走市では魚体を傷つけにくい延縄の専業漁も行われています。
カレイやタラなどの延縄漁の副産物としても捕られ、かつては手繰り網も使われていました。
冬は脂がよく乗っている為、焼魚・鍋・煮魚にすると特に美味しいです。
白身でクセがなく、あらゆる料理に活用できます。
身は軟らかく、小骨が少ない為、老人や子供にも食べやすいです。
20世紀の前半はトロール網などで大量に捕れ、安価な魚でしたが、
近年は旬が冬季である為に、漁の安定性が確保できないこと、
扱う漁師の減少等の影響、近年の燃料価格の高騰も重なり、
漁獲高が減少して流通量が減少すると、
逆にマスコミに注目されるようになり、
水揚げが最も多い北海道沖等では、
網走漁業協同組合が『釣きんき』を商標登録するなど、
地産地消の一環でブランド化しています。
関東以西では祝いの席の供え物として一般的にマダイを用いますが、
北海道ではキチジが用いられることが一般的です。
秋田県では『キンキン』と呼ばれていますが、
特に秋田県南部の大仙市では、
伝統的に結婚披露宴の料理にキンキンの尾頭付きを付けるのが通例で、
そのキンキンの大きさで両家の家格が推し量られるとされています。
また、参列者は披露宴の場でキンキンに箸を付けることは許されず、
必ず家に持ち帰ってキンキンかやき（キンキンを入れた醤油ベースの鍋）にして
家族で頂くこととされています。
これら風習は、高齢者の間では当然のこととされていましたが、
時代とともに薄れる傾向にあります。
日本では刺身、しゃぶしゃぶ、焼魚、煮魚、干物、粕漬け、酒蒸し、鍋物、ムニエル、飯寿司などで食します。
北海道の東部沿岸地域では、
茹で上げ、ウスターソース（中濃ソース）・醤油を掛けて食するお湯煮の食文化があります。
これは、旬の北海道沖で捕れる物は、身が淡白で脂が非常に多い為、
魚からの出汁・脂が美味しく、
特に味付け（醤油、砂糖などを使った煮付け）等はしなくとも食べられ、
とても美味しいためです。
キチジを塩と日本酒と生姜だけで炊いていきます。
キチジの塩煮
キチジの目玉の水晶
お魚大好き。
タイのタイならぬ
キチジのキチジ
キンキの握り寿司（正式名称はキチジ）
