焼いて食べる寿司!?『いか糀(いかこうじ)・イカの樽寿司(いかのたるずし)』
[すし・sushi]
2020年10月
兵庫県 新温泉町(しんおんせんちょう) 三尾(みお)。
絶景の日本海を望むこの集落に『郷土寿司(きょうどずし)』があるということで行ってきました。
指定の住所に到着。
今回の会場はこの『みほのうら保育園』。
廃園を利用して作られた保育園型加工場です。
浜坂町立 御火浦へき地保育所
御火浦で『みほのうら』と読みます。
へき地と言われてみれば確かにへき地ですが
保育所の名前に入るほどとは。。。
昭和57年に三尾トンネルが開通するまでは、
歩いていくか、船での移動が交通手段だったそうです。
御火乃浦(みほのうら)と、乃を含めて書く場合もあるようです。
但馬御火浦(たじまみほのうら)は、
山陰海岸国立公園の中心に位置する60数戸の小さな集落で
三方を山々に囲まれ、目の前には日本海が広がり、豊かな漁場と海産物に恵まれた場所です。
御火浦(みほのうら)という名前は、
魚を誘い寄せるために夜の漁船で焚く『漁火(いさりび)』に由来すると言われていて
古くから恵まれた漁港であったことがうかがえます。
こんな最高なロケーションです。
山陰海岸ジオパークを代表する景勝地であり、
国の天然記念物がここ『但馬御火浦海岸(たじまみほのうらかいがん)』です。
港の中もこの透明度。
すぐに飛び込みたくなってしまいます。^^;
海と共に暮らしてきた三尾でしたが、
近年の漁獲量の減少など、海業の不振により地域を離れる人が増え、にぎわいが失われつつあった。
そんな時、『なんとかしなければ、三尾が忘れ去られてしまう。』
と、平成23年、脇本松夫区長の呼びかけにより『ふるさと自立計画推進モデル事業』の取り組みが始まりました。
三尾の地域資源である海産物、三尾大島や世界最大級の洞門『釣鐘洞門』などの雄大な自然。
これらの資源をどう生かすのか?という議論を繰り返し行ったそうです。
・手作り
・天然
・地域の人が参加する特産品づくり
・自然体験型ツーリズム
こちらが『御火浦 村おこしグループ』副代表の向根敏己(むこねとしみ)さん。
平成22年に山陰海岸が世界ジオパークに認定されたのを機に
女性たちを中心に『豊かな海の幸を利用した村おこしをしよう!』と声があがり
グループ結成の中心となった方です。
『年をとっても、住み慣れた三尾でおしゃべりをしながらいきいきと暮らしたい。』
この目標であり、コンセプトは、
僕が見る限り、完全に達成している印象を受けました。
目の前の浜でとれた天草(てんぐさ)で作られたところてんを
おやつに出してくださいました。
ツルッとして、モッチリして天草の香りがしっかりある本物のところてん。
大好きな美味しさでした。
そして早速見せてくださったのが、郷土寿司の『いか糀(こうじ)』(冷凍)。
スルメイカ、米、米こうじ、塩、唐辛子で作るイカのこうじ漬け
酢を使わずに40日ほど熟れさせて完成する『なれずし』の一つです。
数年前までは『イカの樽ずし』という名前だったそうですが、
イメージがつきにくいのではないかということで
『いか糀(こうじ)』という名前に変更したそうです。
昔の三尾は、冬になると海が荒れて、唯一の交通手段も無くなるので
他地域との往来が難しくなります。
そこで考えられた保存食が『いかの樽寿司』です。
料理上手な人から地域行事の際に教わって各家庭で作られていた、まさに郷土寿司です。
この他にも、『さば樽ずし』や『ハタハタの樽ずし』などもあり味見をさせていただきました。
正直、どれも塩分が強く利きすぎている印象でしたので
しっかりと自分の言葉で伝えたところ
ぜひこの『いか糀』をブラッシュアップしてください!と
とても柔軟なお返事が返ってきました。
せっかく昔から受け継がれた食文化を
現代では味が合わないからと無くしてしまうことは寂しいことです。
しかし、どうしてこのような塩分濃度なのかを紐解けば、
冷蔵庫が無かった時代に考えられたお寿司ですから
保存のために塩を強くするという理由があったわけで
味付けよりは保存のため。という要点が最大のポイントになっています。
冷蔵庫があり、冷凍流通が可能な現代であれば
強い塩分で保存する必要がありません。
『いか糀』を作るお母さん方もそれには納得してくださり
塩やこうじの分量や、製造工程を改めて一緒に考える機会をいただきました。
その他にも、特産のワカメのご相談が。
現在97%が養殖ワカメという日本で
残りの3%の天然ワカメの一部がこの三尾の特産品としてあります。
養殖ワカメは、ロープに種(幼芽)をつけて海面下に向かって育ち、
うすくやわらかく大きくなるのが特徴です。
天然ワカメは、10mまでの潮深帯の岩に荒海に揉まれながら育ち、
肉厚でシャキシャキとした歯応えが特徴です。
しかし、食卓からは海藻離れも深刻で
この貴重な天然ワカメでさえもなかなか売れ行きが振るわないようです。
日本海ならではの荒磯ときれいな海で育った天然わかめは、
旨味、肉厚の食感、磯の香りのすべてが揃う上質なわかめです。
春が旬の生わかめが楽しみです。
このあたりの課題解決も含め、
必ずまたこの場所に来ます!と約束をし
この日は三尾を離れました。
と言ってもお母さん方、根っから明るくて、面白くて
頭を抱えて悩んでいるわけではなく、
この課題を少しずつでも解決しながら、伝統の食文化を守っていき、
地元の食材と関わりながら、何より楽しく生きていきたい!
という気持ちで作られているのがお話から受けた印象でした。
ちなみに集合写真が撮れませんでしたが、
『御火浦 村おこしグループ』には十数名のメンバーが所属しています。
この日の夜、
ファムトリップで集まったメンバーを中心にバーベキュー交流会がありました。
なんと、そこにイカ糀をたっぷりと持ち込んだ向根(むこね)さんの姿が!
お肉や野菜と一緒にグリルされる寿司。
生で食べられない寿司!?
焼く寿司!?
ハサミで切って食べる寿司!?
え!?お寿司なのに、生で食べられないんですか。。。。?
素材に問題あり?それとも製造工程に問題あり??
寿司職人としての自分の頭の中は混乱状態。
これは次回しっかり確かめに行かなければ。
いか糀の魅力をしっかりと若者たちに伝える向根さん
この時点でのイカ糀は
食べれば後を引く美味しさがあるものの、
やはり塩辛く、
食べた皆さんのコメントは正直良いものではありませんでした。
この時、自分の中でも本気でスイッチが入りました。
12月頃にまた来ます。
そして
2020年12月22日
大寒波から1週間後の新温泉町三尾に再びやってきました。
この日の御火乃浦(みほのうら)も綺麗でした。
釣りに行きたい衝動を抑えて、ずっと海を眺めていました。
13時30分待ち合わせだったのですが
1時間前に到着してしまったこともあり、
前回登れなかった『影岩稲荷大明神』さまにご挨拶に行っておこうと
軽装で登り始めました。
しかし、進んでも進んでも道という道は特になく、
険しい山の中、さらにはまっすぐ立っていられないほどの急斜面を登る感じ。
ここにお社が本当にあるのだろうか?
年配の方だったら絶対に参拝すらこれない難易度です。
大きな岩が真っ二つに割れたような、鬼滅的情景。
この近くには、三柱神社と八柱神社もあるし。
もしやその奥にお社があるのか!?
でも大木が倒れて横たわり前には進めない様子。
雪が溶けて、腐葉土がヌルヌル滑り
岩には苔がみっしりと生え、
掴まろうと手を伸ばした木も腐っていて折れる。
天気も曇ってきて、はぁはぁはぁはぁ、息も上がる。
登るのはどうにかなりそうだけど、同じ道を降りて帰れる自信がなくなってきました。
もしかして、山の頂上にお社があるのか?
だとしたら急がないと待ち合わせ時間までに下山して移動できない。。。
でもここまできたら頂上まで目指したい。
すでに全身泥だらけ、汗まみれ。
打合せ前に俺はなんてことをしてしまったんだ。。。。。
滑って転んだら崖から落ちてしまう。
油断したら枝が刺さってくる。
集中を切らさないように急ぎ足で頂上を目指しました。
そして頂上に到着。
なんなんだこの空気感は。
何も考えることができない。
そして、
お社がないではないか。。。。。
ゆっくりと空を見上げて、深呼吸を3回。
後ほどわかったのですが、
翌日この山を望める、三柱神社からこの山を撮影した写真。
あの山の頂上に神社があると信じて登ってしまいました^^;。。
転ばずに下山することはまず不可能な急斜面。
僕は下る覚悟を決めて、
何度も滑り、転び、さらに泥だらけになりながら
来た道と全く違う道を通ってどうにかこうにか無事下山。
この時点で13時30分。
遅刻が大嫌いな自分が遅刻するなんて。。。。
すぐに車に乗り込み
待ち合わせ場所の『みほのうら保育所』に向かいました。
到着後、すぐに打合せです。
今日は天然ワカメの状態確認や、部分ごとの茹で時間の再確認、
製品の問題点や、販売について、
それから
今後の方向性、お母さん方の希望、理想などなどなどなど
とにかく、
お母さん方が楽しく、元気にを最優先に、
この地元の特産品を美味しい状態で全国に出荷して
良い評価を得られるように真剣に話し合いました。
気がついたらあたりは真っ暗。
休憩無しで7時間ぶっ通しで盛り上がりました。
そして明日はいよいよ
『いか糀(イカの樽寿司)』作りを全工程見せていただきます。
地元、浜坂で水揚げされ、船内凍結された状態の良い
冷凍のスルメイカを前日から解凍。
1箱で7kg(約25本)ほどです。
また明日集まりましょう!
ということで保育園をあとにし、
宿のある新温泉町の温泉街に夕食へ
入った中華屋さんのメニューの中にみつけました!
『いか麹漬け』
ん?
焼いていないぞ?
全く別の食べ物だ。
実は、新温泉町の中でも
山側の『いか麹漬け(こうじづけ)』は、しっかり干したスルメイカを刻んで麹に和えて
ふやけてきたくらいの硬さで食べるもの。
対して、海側の三尾の『いか糀(こうじ)』は生干しで米こうじに漬け込んで発酵させてから食べる。
この近距離でもここまで違うのか。
翌朝
スルメイカ、バッチリ解凍してますね。
さすがのスピードで次々とスルメイカをさばいていくお母さんたち。
これまで破棄していたというスルメのワタ。。。。
これで十分、新商品も作れます!
ワタが切れないようにさばくコツなど、生意気に伝授する岡田。
そう。
ぼくも、イチゴがカワイイ、特注作業着に着替えさせていただきました!
イカを洗い。
役割分担もバッチリです。
スルメイカの下処理が終わり、
次は天日干しにする前の塩水漬けの工程です。
7kg(約25本ほど)あったスルメイカを捌いた身だけの分量に対して
5kgの水と400gのお塩で作った塩水。
イカ、塩水、イカ、塩水、イカ、塩水と交互に桶の中に入れて
30分ほど漬け込みます。
スルメイカを塩水漬けている間に、天日干しのための道具類を準備してトラックに積みます。
冬の冷た〜い空気と程よい潮風、見え隠れする太陽の日差し。
港を前にして、お母さん方は『イカを干すには絶好の天候だね!』と口を揃えました。
桶の中から塩水漬けにしていたスルメイカを大きなザルにあげて、
イカの天日干しスタートです。
立て付けてある竹の柱をロープで横に繋いであります。
そのロープを抱き抱えるように、串を刺して固定していきます。
この作業も速い速い!
お母さん方が協力することで、イカのカーテンがどんどん仕上がっていきます。
イカのゲソが絡んで乾きづらくならないように
ゲソ部分にも一本串を通します。
こんな具合に。
全てのイカを干し、
滴る塩水と揺れるイカという
この場所ならではの風情を五感で御馳走になり
3,4時間ほど天日干しに。
ここまでの工程、お疲れさまでした。
それぞれがひとまずここで解散し、家事や用事に。
時間がある人は、保育園に。
この感じがまたいい。
それでも海が好きなお母さんは、
海辺に海藻を摘みに。
アオサが目的ではなく、
狙いは、この 『ソゾ』 という海藻。
お母さんのお一人が、舟釣りに遊びに出かける旦那様を発見!
漁師さんかと思ったら、趣味で釣りに出るためのボートを所有しているのだそう。
釣り好きにはたまりませんねー。
イカの天日干しが終わるまでの間、
僕は神社が好きなので、近くの2箇所の神社にお参りすることにしました。
その名も『三柱神社(みはしらじんじゃ)』
神社あるあるではございますが
傾斜の急な石段。
しかもこの日は、雪解け苔ヌルバージョン。
手すりに掴まらないとマジで危ないやつです。
写真では伝わりづらいですが、
慎重に登って、振り返るとこんな感じ。
こちらが三柱神社のお社です。
お約束の狛犬写真。
三柱神社のお参りを終え、
作業場に戻ると、
お母さんの一人が
炊き立ての熱々ごはんと
地元、兵庫県香美町香住区のこうじ屋さん(森新屋商店)の米糀を
1.5kgずつ、1:1で混ぜていました。
このあとの最終工程、干したイカを糀漬けにするための
米糀が熱々では、イカに火が通ってしまうため、
先に混ぜて冷ましておくためです。
部屋を移し、
皆が集まる、温かいコタツのあるお部屋で打合せを重ねているわけですが、
なんと、お昼ご飯を振る舞ってくださいました!!
お腹ペコペコでしたが、
この日はお昼ご飯抜きで頑張っちゃうぞ!と気合入れていたので、
まさかお昼ご飯がいただけるなんて!!!
炊き立てのご飯に、
三尾の天然ワカメと山椒煮
サバの味噌漬け
天然ワカメの甘辛炒め
野菜の煮物
そして、本命の『いか糀』。
そのままで食べると塩分の強いつまみとなってしまいますが、
白いご飯と食べたらもう、最高に美味しいです!
スルメイカをさばく際に、お母さん方が皆、ボールに別途取り分けていたこの部分。
スルメイカの白子(精巣)
みなさんの大好物だそうです!
塩茹でしただけでも本当に美味しい!
そして、この透明感のある物体。
知っている方は知っている、イカの精莢(せいきょう)。
生で食べたら危険なものですが、
塩茹でしたらチュルチュルコリコリで美味しいです。
お母さん方は、精莢(せいきょう)を知らずに食べていたので、
袋を切って、精莢カプセルを飛び出させて見せてあげました^^
美味しいご飯の時間は本当に幸せで、会話も弾みます。^^
お昼ご飯が終わると、
食事の片付け部隊とイカの一夜干し反転部隊に別れて行動です。
先ほど干したスルメイカ、少し折り畳まれて乾きづらかった部分を反転させて
改めて干し直していきます。
塩漬けにして干したスルメイカのワタ
うす口醤油漬けにして干したスルメイカのワタ
どちらもいい感じです。
この日の干しイカの反転工程は、お母さん二人で全てやりました。
なんというか、
このまま焼いて食べても美味しそうな
生干し状態のスルメイカ。
というか、そのままかぶりついても絶対美味しいはず。
こうやって干していると、
空からはカラス
地上からはネコがいつの間にか持っていってしまうことも良くあるそうです。
あともう数時間で天日干しが完成。
それまで、一旦休憩です。
保育園に戻るまでの道中、
山から流れてくる水がずっと流れ続ける水場。
贅沢の極みです。
Last One が神々しくも寂しげな柿。
保育園のいつもの場所を覗いてみると、
お母さん方が集まって、おやつを食べて女子トークをしていました。
あ、この部屋、しょくいんしつ だったんだ!
お!僕が見たことのないお母さんも増えている!
僕も温かいコーヒーを一杯いただいて、
イカが干し終わるまでのもう少しの時間、
もう一つの神社
『八柱神社(やはしらじんじゃ)』に行くことにしました。
保育園を出てすぐ横にある水路。
良く見ると顔みたいでとってもカワイイ。
ネコみたいな耳も付いてる!!
マインクラフトみたいだな。
今日の漁港も綺麗だなー。
見るたびにいつも違う青色な気がする。
あぁぁぁぁ。
釣りがしたい。
今回は、何一つ釣具を持ってきていないので
悶々とした気持ちで海を眺めるしかできない。
晴天の御火乃浦(みほのうら)
ここからも海を眺めて、磯釣りを妄想。
あのサラシに投げたい!!
あれ??
良く見ると、あんなところに釣り人いるし!!!!!
あんたも好きね〜。
右下の人、波かぶってますが。。。
もう少し進んだところに、別の港町が見えてきました。
写真中央に鳥居も確認できます。
この辺りの集落の名前が三尾(みお)です。
お!ここに噂の『前田渡船』さんが!
船で沖の釣り場まで渡してくれるのが渡船屋さん。
ぜひ次回!
そして念願の『八柱神社(やはしらじんじゃ)』に到着!!
そして、神社あるあるの、超急傾斜の石段!!
写真で伝わりますかね??
しばらく参拝者がいらしていないのか、
苔と落ち葉でツルッツルです。
カニ歩きで登り降りしないと、まず転びますね。
無事、お社到着。
お約束の狛犬。
八柱神社もまた、
ずっと鳥肌が立ったまま緊張感のある神社でした。
お社の横からは三尾港が見えました。
そろそろお母さん方との約束の時間。
戻らなくちゃ。
干したイカの取り込み作業、そして、いよいよ糀に漬け込む時です。
保育園に戻ると、唐辛子を縄で結んで乾燥させたタカノツメを
一つ一つ外していました。
これも『いか糀』に一緒に漬け込むものです。
そして、初めましてのニューキャラクター、良子ちゃんが鎮座。
さて、いよいよ天日干ししたイカの取り込みです。
程よく水分が飛び、絶妙な柔らかさで干し上がっていました。
何か機械を使うわけでもなく、
長年、素手でイカを触り続けてきた、この手が
その完成度を瞬時にして判断しています。
外側と外側、もしくは内側と内側を対にしてカゴに入れていきます。
この日干した、すべてのイカの取り込みがこれで終了しました。
作業場に戻ります。
そしてようやく、全ての素材が出揃いました。
材料はシンプルにこれだけ。
・天日干ししたスルメイカ
・米
・米こうじ
・タカノツメ
まずは樽の底に、米こうじとタカノツメを散りばめます。
ここでも役割分担。
イカに米こうじを抱きつける人と、それを樽に綺麗に並べ漬け込む人。
たっぷりの米こうじをしゃもじにとり、
イカの身の内側に均していきます。
ゲソを折りたたむようにして、その米こうじの上にかぶせます。
それらを包み込むようにしてイカを丸めて、
漬け込み人に渡します。
樽の丸い曲面に沿わせるようにして並べていきます。
この工程を繰り返し行っていきます。
ちなみに、イカの中にある硬いヤリ(殻)の部分は、敢えて残すことで、
漬け込み中のイカの型崩れを防止するそうです。
食べる前に外すのがオススメですが、気にならない方は、食べてしまっても良し。
一面、イカで埋まったら、また米こうじとタカノツメを散らします。
全てのイカが入ったら、最後に上から米こうじとタカノツメ、
ビニールを被せて、
中蓋を押し付けるようにして漬け込みの工程は完了です。
この最後押し付けの際に、
お母さん方が自然に『おいしくなーれ、おいしくなーれ、おいしくなーれ、おいしくなーれ。』
と口にしていたのがとても印象に残っています。
とても大切なことだと思います。
この上に重石を載せていきます。
重さはやく 15kg。
この様々な形に変化をする、色々なサイズの石をベースの重石にすることで
いか糀が均等な圧力で押され、均等な漬かり具合になります。
さっき、外の流しの所にあったのをみつけて、重石かなーと思っていたらやはりそうでした。
しかもこの石、目の前の浜から一つ一つ選んでこちらまで持ってきて、
真水で塩抜きして洗ったもの。
このオリジナルの重石は、漬け込みの時期が終了する
『今年もありがとう!また来年もよろしくね!』とまた海に返しにいき、
毎年毎年、新しい石を重石にするようにしているのだそうです。
そこに、さらに15kgの重りをのせ、合計30kgで押していきます。
ここから、冬の外気温で約40日間、低温発酵させていきます。
昔はこれを木樽でしていたことがイカの樽寿司の由来です。(現在は、いか糀。)
そして、酢飯屋 岡田大介 2020年12月22日
1樽キープさせていただきました!
40日後ですから
2021年の1月下旬、もう一度この三尾に行って
いか糀の完成を見に行ってみたいと思います。
そして、酢飯屋でのご提供はもちろんのこと、
ご希望の方には、冷凍で直送もさせていただきますので
ご興味のある方、ぜひその時はご注文くださいませ。
【酢飯屋メールマガジン】にてお知らせさせていただきます。
塩漬け干しと醤油漬け干しにしたスルメイカのワタは
一旦冷凍し、次回お母さん方と試食会をしたいと思います。
丸々二日間、三尾のお母さん方との濃厚な時間もこれで終了です。
お母さん方の段取りのおかげで、全工程を見せていただくことができ
感無量でした。
時間も遅くなってしまったので、帰り支度を始めていると
まもなくクリスマスだからと、
良子ちゃんが僕のためにクリスマスリースを作ってやるからと、
山から蔓などをとってきて、目の前で作ってくださいました。
三尾のお母さん方、今回も楽しい時間をありがとうございました!
また来月会いましょう!
僕は、普段感じたことのないような、なにか温かく柔らかな不思議な感情を胸に
この日、保育園をあとにしました。
帰り道、山の上から振り返った夕暮れの御火乃浦(みほのうら)もまた
忘れられない景色でした。
連日、新温泉町 朝野家さんに宿泊させていただいていたのですが、
あのクリスマスリース(というか、これはリースなのか!!??)
床の間に飾らせていただきましたよ。
2021年1月11日
中村清美さんからLINEで写真が送られてきました。
今現在の『いか糀』の状況です! と。
こういう途中経過は、現場の方しか見ることのできない貴重な写真です。
ブレてはいるものの、そのお気持ちがとても嬉しかったです。
しかも、こんなに大雪の日にも関わらず、毎日毎日
いか糀を見に面倒に行く清子さん。
手作りに愛がこもるのは、こういうところにありますね。