ほんだわら・ホンダワラ・Sargassum fulvellum
[海藻]
ヒバマタ目ホンダワラ科ホンダワラ属ホンダワラ
ホンダワラを広げる海藻界のレジェンド新井章吾先生。
砂浜に打ち上げられていたホンダワラを海水で洗う新井先生。
こちらが、ホンダワラの中のホンダワラ。
【ヒバマタ目ホンダワラ科ホンダワラ属ホンダワラ】
緑の部分が綺麗なので、その他の茶色い部分が弱っているのかと思いきや、
逆です。
ヒバマタ目
ホンダワラ科
ホンダワラ
低潮線〜潮下帯の岩上に生えていて長さは1m以上になります。
地域によっては正月飾りに用いられる海藻です。
海藻のスペシャリスト新井先生ともなると
海藻界ではメジャーなホンダワラは、
とっくに興味から外されているものかと思いましたが、
新井先生は違いました。
どうやって食べればホンダワラが美味しく食べられるか?
特に僕たちのような料理人に、食材としてのホンダワラを扱わせると
どのように美味しく昇華させられるのかを楽しみにしているわけです。
しかも今回は、ホンダワラの中でも、一番美味しいというホンダワラ属ホンダワラ。
僕たちの海藻経験値では、見た目で全く判断できないレベルです。
ホンダワラは、
海藻類の中でも体の仕組が最も複雑な形態をしていて
9個ほどの部位から成り立っています。
岩などに固着している根の部位から順番に上に、部位を説明すると、
・付着器
・茎
・下部の葉
・主枝(しゅし)
・中間部の葉
・気胞(きほう)
・生殖器床(雌性生殖器)
・生殖器床(雄性生殖器)
・上部の葉
という具合に分化しています。
根は仮盤状。
一年生ではありますが、体の高さは2mくらいになります。
茎は単条、多数の枝があり、三稜形か四角柱でつよくねじれています。
葉は色淡く柔らかいです。
箆(へら)形、楕円形、披針形の鋸歯(のこぎりば)をもち、中央付近で消える中肋があります。
気胞は楕円形か倒卵形、円頂か微凸頭で
生殖器床は円柱状です。
陸上植物の根には、体を支える役目や水分や養分を地中から吸い上げるはたらきがあります。
ところが、海藻の場合、
体全体で養分を吸収するので、根に相当する部位は仮根(かこん)または付着器と呼ばれて、
岩盤や石などに固着するためだけの器官になっています。
ホンダワラは、付着器が他のホンダワラ類に比べて小さくて岩に固着する力が弱いので、
波当たりの強い場所では流されてしまうことが多いようです。
ちょうど先日も中米ベリーズに住む友人から
カリブ海にホンダワラが大漂着したと連絡がありました。
ホンダワラ類の特徴は、気胞と呼ばれる浮き袋を持っていることです。
その丸いプチプチの中には空気が入っていて、海中で、それで立っています。
気胞の浮力によって体を直立させることができるので、
陸上植物の様に体を支える丈夫な幹を持つ必要がないわけです。
気胞を持ったホンダワラ類は、岩などから離れると、流れ藻になって海面を漂い、どこか遠くへ流れていきます。
流れ藻は、サンマやサヨリ、トビウオなどが卵を産み付けたり、
ブリの稚魚(モジャコ)やメバルの稚魚が生活したりする場所として重要な役割を果たしています。
ホンダワラの中に、タツノオトシゴを発見!
スキューバーの後にスーツを干すための鉄パイプに
おもむろにホンダワラを干す新井さん。
乾燥具合でも海藻の味は変化してきます。
どのタイミングで食べると美味いのか?それも実験する他ありません。
で、とりあえず生のままのホンダワラの味がどうなのかの確認です。
え?????
ものすごい旨味があって美味しいんですけど。
食感も程よいシャキシャキ感。
これ、火入れしても絶対美味しくなるぞ。
夕食で試してみよう。
今回の海藻料理の中で、一番衝撃的だったのが、
ホンダワラの味でした。
それも、50以上あるホンダワラ属の中のホンダワラ。
要するに、ホンダワラの中のホンダワラ。
新井先生が海から打ち上げられていたホンダワラを
ちょっと干していたあれです。
軽く洗って、水気をしっかり切って、エビやイカと一緒に炒めたこのホンダワラが
噛めば噛むほどジュワジュワと旨味が出てきて、さらには程よい噛みごたえもあって
普段から海藻をよく食べている面々もとても喜んでくれました。
塩蔵のホンダワラ
塩抜きするためにボールに水をはり洗うと汚れですぐに濁り、
透明になるまで5,6回すすぎを繰り返します。
軽く手で掻き回しているだけで、どんどんと細かい藻体が切れてしまいます。
それでも残ったホンダワラを手で絞るとアカモクのようなヌルヌルが出てきます。
以前はっちゃんらと食べて感動した時のような食感ではないです。
おそらく、少しでも一度乾燥させたほうが良い、もしくは、乾燥させて流通させるのが良さそうです。
以前お土産でいただいた韓国の乾燥のホンダワラ(汚れ物凄かったやつ)も洗っても洗っても汚れがすごいものの、味は強かったので、塩蔵よりは乾燥向きの海藻なのかもしれません。
ーーーーー
ーーーーーーーーーーーーー
※新井さんのプレゼン資料より
ホンダワラ(真告演なのりそ、馬尾藻、神馬演、銀葉
藻、学名:Sargassum fulvellum)は、済州島や日本海治
岸を中心に祭事に使われてきた食用海藻。
志賀の海人の磯に刈り乾すなのりその名は告のりてし
をなにか逢ひ難がたき
(作者不明 万葉集 巻十ニ ミー七七)
志賀の海人が磯で刈って干す「なのりそ」のように、名前は告げたのに、どうして逢うことができないのだろう。
巌薬(いづも) かけ
出雲市長浜神社による解説
『当地方では感明けの後海で体を清めた証しに海岸の海草(海藻)をもって神社へお参りします。
お供え物でもあるこの神聖なる海草(海藻)は「いづも」と言われ「出雲」の語源になった言葉です。』
島根町小波では、正月1月3日の歳徳神宮練で神典が集落を回った後、
海に向かい、海岸に神興を据えます。
それから住民の数名が海で身を清めた証として、
海岸で捨った海藻のホンダワラ類を神典の注連縄にかけ、礼拝します。
その後、担ぎ手たちは神興を担いで腰くらいまで海中に入ります。
出雲地方では標準和名のホンダワラ(=神馬藻)が神饌(神様の食べ物)として供えら、
乾燥させたホンダワラがよく家庭の神棚でも見られるそうです。
おそらく小波でも
過去にはホンダワラ類の中でも、ホンダワラが厳藻かけに使われていたはずです。
日本列島において水田での米作りが本格的に始まった弥生時代に、
出雲地方だけが海藻を稲作の肥料に使ったことで収量が他の地域より増加し、
古代出雲王国が形成されたのではないかと、私は推測しています。
そのため、海藻=厳藻(いづも)が神事に使われ、出雲と表記されるようになったと考えています。
神輿の注連縄への厳藻かけ (いづもかけ)
新井先生曰く、韓国 チェジュ島のホンダワラを使った海藻スープ『モンク』が美味いらしいです。
ーーーーーーーーーーーー
【ホンダワラとイカのパスタ】
そのまま塩蔵されたホンダワラを洗い、ぬるぬる出始めた状態でしたが、オイルと絡めると全く問題なく
めっちゃ美味しいパスタになりました。
ホンダワラの食感としての存在感はほどほどという感じです。
が、ホンダワラから絶対旨味出てると思います。
問題点としては
そのまま塩蔵されたやつは、しっかり洗っても少々残るワレカラぱいせんは一緒に食べちゃうとして、
ジャリが3回ほど当たりました。
初めての人が、一度でもこれをくらうと嫌われてしまうそうです。
ある程度洗ってから加工したほうが良さそうです。
ーーーーーーーーーー
【ホンダワラとイカのクリームパスタ】
こちらも上記と同様ですが、クリームがしっかり絡みやすいホンダワラは、この料理にとても適しています。ひじきとは違い、パスタに寄り添う程よい食感なので大ありです!
ーーーーーーーーーーー
乾燥ホンダワラ
マンニトールが吹いている感じなので
さらに熟成させると味が濃くなりそうです。
サッと茹でてから乾燥させてもマンニトールが出るのは知りませんでした。
生のまま干した時に限ってでるものだと思っていました。
はっちゃん、新井先生 これはマンニトールですよね?
水に1分ほど浸ければ、すぐに戻りました。
若干ですが粘りが出ていたのでサラダで使うというよりは、
和えるものに向いていると思い、
ホンダワラチャーハンにしました。
他の海藻同様、油との相性は良いのと
粘りが程よいので、チャーハンには最適な食材です。
ーーーーーーーーーー
飽和塩水で保管して脱水したもの
通常の塩蔵保管したものや、乾燥ものよりも生き生きとしているのがわかります。
まとまっているとなかなかわかりづらいですが
優しくほぐしていくと、
全体像が明らかに。
中央にある主枝は、ねじれながら伸びて、断面は主に三角形をしています。
左右に交互に葉が伸びているのがわかります。
葉は、へら形や楕円形で、フチに鋸歯があります。
途中、不規則に気胞が確認できます。
気胞は卵形や楕円形で、長さ5〜10mm、直径3〜7mmほどです。
先端は丸いか尖り冠葉があるものもあります。
茹でて緑色に変色したホンダワラですが
飽和塩水保存のおかげでどの部位にも張りがあります。
生長すると、上部の葉や気胞は細く小さくなります。
ホンダワラが幼体の頃は、葉も気胞も大きいです。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
【ホンダワラとトサカノリのサラダ】
〈内容〉
ホンダワラ
トサカノリ
サニーレタス(グリーン)
ミニトマト(赤)
フレンチドレッシング
※白いドレッシングをまとわせることで、ホンダワラの存在や色を引き立てる効果がある
【ホンダワラとトサカノリのサラダβ】
〈内容〉
ホンダワラ
トサカノリ
サニーレタス
大豆の水煮
シーザードレッシング
※ ひとつ前のサラダのグリーンレタスと比較するとサニーレタスの紫が、トサカノリやホンダワラの色を邪魔してしまい暗い印象になるのがわかる。
シーザードレッシングは、トサカノリの臭みを引き立てる傾向にある。
など
この海藻はこの野菜と色や食感や味の相性が良いや悪いなどが見出せるようになってくる。
【ホンダワラのサラダ】
〈内容〉
ホンダワラ
水菜
パプリカ(赤)
セロリの葉
スモークチキン
アーモンド
イタリアンドレッシング
※フレンチドレッシングなどの白系のドレッシングで海藻の形状をキワ立てるのとは反対に
イタリアンドレッシングや和風ドレッシングなどの透明系ドレッシングだと、海藻そのままを自然に見せられる
【ホンダワラとトサカノリとアボカドのサラダ】
〈内容〉
トサカノリ
ホンダワラ
水菜
アボカド
レモン
黒酢入りたまねぎドレッシング
※全部一緒に食べると、ドレッシングのオイルとアボカドの滑らかさがそれぞれの海藻食感にマッチします。
【ホンダワラとトサカノリの鶏ハムサラダ】
〈内容〉
トサカノリ
ホンダワラ
カイワレ
鶏ハム
ミニトマト(黄)
クルミ
和風ドレッシング
鶏肉、トマト、カイワレ、くるみ
様々な生産者さんとシーベジタブルの海藻が掛け合わされて
食材魂が倍増されていく。
『 × シーベジタブル』という考え方。
シーベジタブルの海藻ミックスを敢えてそれだけで完成させずに
何かと、誰かとシーベジタブルの海藻がくっついて一つに。
というように、様々な生産者さんらとのコラボレーションがしやすくなるように
余白を残した商品がシーベジタブルらしいと思う。
【シトラスホンダワラで食べるアナゴの天ぷら】
〈内容〉
ホンダワラ
レモン果汁
玉ねぎドレッシング
アナゴの天ぷら
塩気と酸味をまとわせたホンダワラで食べる天ぷらです
塩、レモンでいただく瞬間的なインパクトではなく、
口の中で天ぷら全体にホンダワラが最後まで絡んで仕事をしてくれます。
【ホンダワラソースでいただく牛カツ】
〈内容〉
ホンダワラ
和風ドレッシング
刻んだホンダワラにお好みのドレッシングを和えて
揚げ物などのソース変わりに使えます。
ホンダワラが液体を吸ってくれるので、
揚げ物がカリカリのままで、器にソースが流れ出ることなく
ソースのロスも抑えられます。
【ピリ辛ホンダワラで食べるイカ焼き】
〈内容〉
ホンダワラ
ごま油
魚醤
一味唐辛子
パクチー
焼きイカ
この組み合わせにするだけで一気にエスニックホンダワラになります。
ホンダワラは強く癖がないので、様々なジャンルのお料理に適応できる海藻だと思います。
【ホンダワラとほうれん草のサラダ】
シーザードレッシング
ホンダワラの形状を理解していると
それを生かした盛り付けができます。
【ホンダワラー油】
(ホンダワラたっぷりの食べるラー油のようなものです)
ホンダワラ(刻み)
ごま油
柚子胡椒(赤)
パプリカパウダー
全てお好みの量で。
おろしにんにくor 揚げにんにくなどを入れるとさらに美味しくなると思います。
酢醤油と食べるとよりホンダワラー油が美味しくなり
もちろん、餃子に最高に合います。
このホンダワラー油を混ぜるだけで
簡単に【ホンダワラの麻婆豆腐】が完成します。
【ホンダワラとワラビのスープ】
ホンダワラの気胞を一粒ずつ浮かばせたスープ料理です。
液体の中でトサカノリを漂わせること、
液体に気胞を浮かばせることで
海藻それぞれの特徴を一皿の中に表現しています。
ーーーーーーー
【ホンダワラとオクラ納豆のサラダ】
〈内容〉
ホンダワラ(刻み)
オクラ
納豆(ひきわり)
紫たまねぎ
ごまドレッシング
ねばねば系、ねっとり系食材には
シャキシャキの玉ねぎを合わせます。
ホンダワラは納豆とオクラの間で個性を出そうと頑張っている感じです。
ホンダワラを野菜類の倍入れても良いかもしれません。
【ホンダワラとしらたきのサラダ】
ホンダワラ
しらたき
くるみ
シーザードレッシング
色としては地味、良く言えば大人のシックなサラダ。
しらたきのプリプリ食感にトサカノリの食感は被ってしまい
食感がつまらないサラダになってしまうので
ホンダワラや柚子ひじきあたりが良い。
ホンダワラの粘りが少し加わることでドレッシング(オイル)のなじみも良くなる。
ナッツ類があるとなお良い。
【ホンダワラめんたいこ】
ホンダワラとめんたいこを混ぜるだけ。
そのまま食べても一品だし、
厚揚げなどにのせても美味しそうです。
朝ごはんに欲しくなる一品。
めんたいこやたらこは
基本的に味が濃いので
ホンダワラを和えると程よいです。
めんたいこかさ増しレシピとしてもバッチリです。もちろんタラコでも。
海藻に魚の卵が産み付けられているような見た目も、
海や生命が感じられてグッドです。
広島県 ミナガルデンのバゲットで
ホンダワラのソテーサンド
噛み応えがあって、
野菜と海藻だけなのに、満足感のある一品となりました。