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職人の経験を生かして「すし作家」として活躍する岡田大介さん / 産経新聞「産経ニュース」

[すし・sushiメディア岡田イズム]

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産経新聞「産経ニュース」 2022年8月15日
https://www.sankei.com/article/20220815-RHTIHQC6BFJKLJ3MNQYAVSFOQU/
文:榊聡美さん


【すしで伝える「命の大切さ」 写真絵本が人気】

すし店のカウンターにずらりと子供が並ぶ表紙が目を引く、
写真絵本「おすしやさんにいらっしゃい!」(岩崎書店)が話題を呼んでいる。
海で釣られた生きものがさばかれ、
すしになって目の前に置かれるまでの過程を臨場感たっぷりにつづった一冊。
子供も大好きなすしを通して〝命をいただく〟ことの大切さを説いている。

生き物が食べ物に
「すしはあくまでも入り口。僕の中では、表紙に小さい文字で書いてある副題の
『生きものが食べものになるまで』のほうが主題なんです」

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こう語る著者の岡田大介さん(43)は、
二十余年のすし職人のキャリアを生かし、新たに「すし作家」として活動の場を広げた。

2021年2月の発売から増刷を重ねて2022年、
第69回産経児童出版文化賞のJR賞を受賞。
今年の青少年読書感想文全国コンクールの課題図書(小学校低学年の部)にも
選出されるなど、高い評価を得ている。

物語は、子供たちが岡田さんのすし店ののれんをくぐるところから始まる。
選んだネタはキンメダイとアナゴ、イカ。
海で釣り上げた魚をさまざまな角度から観察して、さばく工程へ。
すると、うろこが飛び散ったり、胃袋から小さな魚やエビが出てきたり。
生きた魚が一貫のすしになるまでの過程は、
切り身に慣れてしまった大人が見ても学ぶことが多い。

見て釣ってさばく
「この絵本を読んで、尾頭付きの魚を買ってほしいとねだるお子さんが多いようです。
夏休みの自由研究にも役立ててもらえたらうれしいですね」

岡田さんが東京都内で営んできた「酢飯屋」は、
自身が釣り上げたものだけをネタにするというこだわりのスタイルで人気店となった。

すし職人がなぜ漁まで?

「まな板の上から見ているだけでは、魚を半分しか知らない。
どうやって釣るのか、何を食べて生きているのか。
そこまで知らないと、すしの味にも、お客さんとの会話にも深みが出ないと思ったからです」

海の上だけでなく、
スキューバダイビングで海中での生き生きとした姿もつぶさに観察する徹底ぶり。
海の中で見て、釣って調理してすしを作る-。
職人としての大きな達成感を味わう一方で、「すし一貫は命の塊」と感じるようになった。

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写真絵本「おすしやさんにいらっしゃい!」。
キンメダイをさばく様子は理科の実験のようでもあり、子供たちは興味津々


「ごちそうさま」
その思いが、写真絵本を手掛けるきっかけに。
絵本の中では、おいしそうにすしを頰張る子供たちに、こう呼びかける。

《生きものは 食べものになって、きみたちの からだの いちぶになる。
わたしたちは たくさんの いのちで できているんだ。》

最後は「ごちそうさまでした」と、両手を合わせる女の子の姿で締めくくられている。

「すしに限らず、食事のときに時々命のことを考えてほしい。
そうすれば、自然に感謝の気持ちが湧くようになる」

子供たちと海へ繰り出し、絵本の世界を実際に体験する
「海の上のおすしやさんにいらっしゃい!」も企画。
すしを通して、魚の魅力や命の大切さを伝える活動は始まったばかりだ。

文:榊聡美