鯛蒸し(たいむし)
高知県香美市香北町で作られる郷土料理の一つであり、
「おきゃく」でのお料理にあると大盛り上がり間違いなしの一品が「鯛蒸し(たいむし)」です。
簡単にいうと、鯛におからを詰めたもの。
ですが、その味付けと材料が加わることでなんとも美味しいお料理となります。
(※鯛はマダイに限らず、イシダイやアマダイなど、その時手に入るお魚で代用可能とのことです。)
今回は「ヘダイ」が手に入りましたので、これで鯛蒸しを作ることになりました。
今回、「鯛蒸し」の全行程を教えてくださったのは、畠中智子さん(モコさん)。
高知ではいつもお世話になりっぱなしです。
今回もありがとうございます!^^
前回の高知旅の際に、モコさんに「鯛蒸し」のお話しを聞き、
どうしても食べてみたくてお願いしたところ、
なんと今回特別に準備してくださり実現に至りました!
僕、岡田は
日本各地に女(おんな)がいるわけですが、高知の女の1人が彼女です。
(冗談です。^^;)
骨をつけたまま背開きにしたヘダイに塩をしていきます。
表面だけでなく、内側やヒレの付け根など
細かな部分にも強めに塩を効かせて、一晩冷蔵庫で寝かせます。
この日の高知はちょうど大寒波の時でしたので
玄関での保管でちょうどよい気温でした。
僕はマダイを捌いていますが、これはおきゃくでの握りずし用です。
すし職人は
やっぱり、みなさまからは「おすし」を求められますので
どこで料理をする時でも、料理の中にはなるべく握りずしを組み込むようにしています。
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翌日
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「鯛蒸し」用の詰め物を準備していきます。
〈材料〉は
おから 500g
豆腐 1丁
葉ニンニク 2本
卵 3個
すりゴマ 15g
砂糖 130g
塩 5g
まずはこちら、「葉ニンニク」を
細かく刻んでいきます。
さらに、フードプロセッサーでペースト状近くまで刻んでいきます。
さらにすり鉢ですり潰しておきます。
豆腐とおから
卵を入れてたボールに
すり潰した葉ニンニクを合わせて混ぜます。
そこに砂糖を加えて、
全体的にしっとりとするまで良く混ぜます。
これで鯛の詰め物は完成です!
前日に塩をしておいた「ヘダイ」、どうなったかなぁ?
ちょうどいい感じに水分も出て、身が程よく締まっていました。
塩を水で洗い流して、ペーパーで水分をしっかりと拭き取ります。
洗い過ぎると、塩が抜け過ぎて、食べた時に味がぼやけてしまうので
塩はそこそこ利いている状態です。
背開きにして頭は割らずに、腹も切らないように包丁を入れてあります。
この位置から切れ目を入れている理由は、
仕上げで盛り付けた際に、表から見て切れ目が見えないようにするためです。
頭や腹骨あたりまでの包丁の入れ方はこんな感じです。
身がしっとりとしていて、塩の利き方も良さそうです。
このまま干物にして食べても美味しそう。
腹骨の奥、お腹の中は内臓は取り除いてあるのですが
洗った際の水分などが溜まりがちですのでしっかりと拭き取っていきます。
手を突っ込むと、内臓を取り除くために切った腹骨の断面がチクチクと当たり
少々痛いですが、美味しい鯛蒸しに仕上げるために
しっかりと工程を進めていきます。
ヘダイの眼の凹み具合を見てみても、塩梅の良さがわかります。
背開きしたこの鯛のお腹の中に、先程豆腐やおから、葉ニンニクで作った
甘めの詰め物を入れていくわけです。
元々内臓があった空間に、しっかりと詰めていきます。
思っている以上にたっぷり詰めるのがポイントのようです。
結構入りましたよ。
が、まだまだ詰めるそうです。
もうパンパンです。
下半身のほうが少し詰めが足りないということで
ギュッギュっとしていきます。
立ててみると、こんな感じ。
バットの縁に寄りかからせているとはいえ、
自立するほどお腹の中に詰め物がたっぷりと入っています。
仕上げはモコさん。
溢れんばかりにたっぷりと隙間なく入れるのがポイントだそうです。
鯛の詰め物の量、想像を遥かに超えたものでした!^^;
背ビレを立てて、ヒレの付け根につまようじを刺して固定します。
綺麗にヒレが立った状態で仕上げるためです。
胸ビレの付け根にも刺して、ヒレが寝ないようします。
魚は、ヒレが立っているか立っていないかで見え方が全く変わってきますので
美しく見せるための先人の知恵ですね。
モコさんが、何やら藁(わら)を持ってきました。
蒸し器の底に藁を渡し
数本の藁を1本の束にしてセット、
もう1箇所、同じようにセット。
その上からハランを敷き、
底だけでなく、横にもハランをセットして
詰め物がパンパンで重たくなったタイをハランの上に置きます。
蒸した後の熱々のタイを崩さないように蒸し器から丁寧に取り出すための藁とハランなわけです。
そして、さつまいもを入れて準備完了です。
さて、
このさつまいも、何のために入れたのでしょうか?
感の鋭い方なら、もうおわかりですね!
蒸し始めて、このさつまいもに串を刺して
すーーっと通ったら、鯛蒸しの完成のサインというわけです。
蓋をして、蒸しあがるまで他の調理をして待ちます。
そろそろ蒸し上がったかな?
OPEN!
さつまいもにもスッと串が刺さり、見事に蒸しあがりましたー!
見た目からして、ヘダイもふっくらと仕上がっております。
美味しそう過ぎます。
パンパンに詰めた詰め物が左上からはみ出していますが
少ないよりは、はみ出しているくらいが良いということで
のちほど修正していきます。
崩れないように注意して釜からテーブルへ移して
柔らかくなった身を崩さないように、そっと藁を引き上げて大皿に移していきます。
緊張の一瞬。
モコさんと同じ力加減で、同じスピードで同時に持ち上げます。
せーの!
そりゃ!
よいしょー!
着皿!
ふぅ〜。
藁とハランを優しく丁寧に引き抜きます。
無事、大皿に盛り付けることができました。
詰め物はこんな感じ!上出来です。
「おきゃく」での一品というよりは、
メイン料理となる華やかな一皿です。
かんぱーい!
鯛蒸しの食べ方
まずは観音開きにします。
ぱかっ。
鯛の身と詰め物をどちらも一緒に器に取り分けます。
ふわふわな鯛の身と葉ニンニクが効いた甘じょっぱ旨い逸品です。
大人気の鯛蒸しは、あっという間になくなっていきます。
モコさん、全行程作るところから食べるところまで
本当にありがとうございました。
今後も、色々な魚で鯛蒸しや、鯛蒸しアレンジ料理を作っていきたいと思います!
ごちそうさまでした!!
「鯛蒸し(たいむし)」の作り方動画のダイジェスト版(3:36)