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にしん・ニシン・鰊・Clupea pallasii

[すし・sushi海の生き物釣り・Fishing]

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『こんにちはー。何釣りですかー?』
※第一声で、『釣れてますかー?』はNG。
だいたい釣れていない釣り人が多いので、声かけられたほうもあまり嬉しくないためです。
やんわりといきましょう。

『ニシンだよ。』

おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
ニシン釣りは、僕もやりたかった釣りの一つです。

話をしていてわかったことは、
このおじさんは
・定年退職して、時間があるので、釣りに行ける日はだいたい釣りに出て、
夕食で食べる分くらいだけ釣って帰るということ
・歳の近い奥様と2人で住んでいて、成人になった子供たちは東京に出てしまったこと
・今日は14時から釣りを開始して19時くらいまでここにいる予定だということ
・まだ一匹も釣れていなくて、当たりすらないということ
・ぼくのことはきっと好青年なのだろうと勘付いて下さったこと

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『で、おじさん。このマシーンって一体なんですか??』


『自動しゃくり機だよ。』

自動しゃくり機!!!!!!!

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『仕掛けを上げたり、下げたり、自動で竿をしゃくってくれるんだよ。
寒い中ずっと手でしてたら疲れてしまうでしょ?』

!!
そんな釣りのスタイルがあったなんて。
釣りの醍醐味は人それぞれとはいえ、
竿さえ持たずに、ただひたすらにかかるのを待つスタイル。
これも文化なんだと受け入れるまで、少し時間がかかりましたが
逆に物凄く興味もわいてきました。

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え!
しかもこれ、本気出したら、竿が5本セットできるようになってる!?

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『これ、おじさんが自作したんですか?』
『いやいやいや、売ってるんだよ。』
『ええ!自動しゃくり機って、売ってるんだ。。。』

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バッテリーの電源を使って、分銅のような重りを上下させて竿をしゃくる。

百写真は、一動画にしかず。
衝撃の自動シャクリ機映像は
こちら、ご覧ください。

僕は、おじさんに本気で言いました。
『ぼく、どうしても活きているニシンが見たいんです。また夕方くらいに来てもいいですか?』
『あー、いいとも。君は本当に魚が好きなんだね。でも多分今日は釣れないと思うよ。』

あきらかに活性の無い海と、寒すぎる漁港。
僕はもう少し小樽観光もしたかったので、正直にそのように伝え、
一度海から街に戻ることにしました。

ホテルの窓から、外が少しずつ暗くなってきたのを確認して
そろそろニシン釣りのおじさんのところに行くことにしました。

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極寒の中、車に乗ることもなく、ただただ自動シャクリ機の竿先と小樽の海を眺めているおじさん
きっと冷えてしまっているだろう。
僕は、月9ドラマのように、自動販売機でホットコーヒーを2缶買い、
両ポケットに1つずつ入れました。

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船の灯りがともり、薄暗くなってきた小樽港。
釣り人の気持ちが高まる夕まづめ
お、俳句になっているじゃないか。^^;

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おじさんのハイエースが見えました。
さっきと車の向きが変わってるな。
風向きが変わって、それに合わせて車の向きを変えて風をよけているのだろう。
ホットコーヒー、喜んでもらえるといいな。
そして、ニシンが釣れているといいな。
その時の動画がこちらです。

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おじさん、コーヒー飲んでくれてる。
嬉しい。
だけどまだ
ニシンが港内に入ってこない、まだしばらく釣れなそうだなー。
とおじさん。

『おじさん、僕どうしても活きているニシンを見てみたいんです。今から、小樽 寿司屋通りを歩いてみたくて
もしよろしければ、ニシンが釣れたら、この電話番号にお電話いただけませんか?すぐに飛んできますので!』

おじさんは笑顔で僕の番号を受け取ってくれました。

『わかったよ。本当に今日は期待しないでおいてね。釣れた時に限り、電話するからね。』

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うわ!また吹雪いてきた!

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僕は一旦この場を離れ、おじさんからの電話を待つことにしました。

『トゥルルルルルル♬』 !!!!!!!!!!!!!!

鳴った!

しかも知らない携帯番号からの着信。
これは、もしや!!!

『はい、もしもし岡田です。』

『あー、もしもし。小樽の釣り人です。』

なんと穏やかで優しいおじさんの電話越しの声。

『に、ニシン、釣れましたか?』

『おう! 釣れたよ1匹だけど。 本当に見にくるかい?』

僕は何だか宝くじにでも当たったような高揚感で
喜びの頂点に達してしまいました。

もうこんなに暗いし、おじさんももう帰る支度を始めてしまっているかもしれない。
いち早くおじさんのいる小樽港に向かいたいけれど、雪はさらに降り積もっているし、。
そう、僕は心から面白いこと、そしてタイミングを最重要にするタイプの大人。
こんな機会は次いつになるかもわからない。

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驚くほどにタイミングよく目の前に停まっていたタクシーに声をかけ
僕は活きたニシンを見るためだけに港までタクシーを走らせました。

真っ暗な小樽港に到着。
タクシーの運転手さんには、ちょっと待っていただき、
すぐさまニシン釣りのおじさんのところにかけ寄った時の映像がこちらです。

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この状況下でこの天候の中、諦めずに竿を出す姿勢。
本当に感動しました。
そこには確かに、釣り上げられたばかりの活きたニシンが泳いでいました。

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おじさんは、ご丁寧にも、活きたニシンを手に取り、その姿を見せてくださいました。
本当に美しい。綺麗。

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『ニシンは、ウロコがすぐに取れてしまうけど、それでも本当に綺麗だよね。』
おじさんの言葉には、いつもなんらかの優しさを含んでいました。

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無我夢中でシャッターを切る僕を、優しい笑顔で見てくれているおじさんは

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僕にとってはヒーローに見えました。

『貴重な体験と、夢だった釣りたてのニシンを見せていただき、本当にありがとうございました! 』

『いやいや、こんな小さなニシンだけど喜んでもらえて良かったよ。またいつか小樽に来たら、この場所で会いましょう。』
おじさんはそういうと、釣り具を片付け始めました。

お互い、名前も職業も知らないおじさんと僕の出会い。
なんだか異国に来たような感覚。

僕は深く頭を下げてタクシーに乗り込み
オジサンとニシンへの感謝の気持ちを、
必ず他の方への感謝に繋げようと誓いました。

以上、酢飯屋ブログ【北海道 小樽市(4日目)】より抜粋

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鰊(にしん)
漢字の「鰊」のつくり「柬」は、「若い」という意味です。
もう一つの「鯡(にしん)」のつくり「非」は否定を表し、
「まだ成魚になりきっていない魚」という意味を表すそうです。

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イワシに似ていますが、イワシより平たい形をしています。
春に産卵のために沿岸に来るニシンは
春をつれてくる魚として、
北国に春の訪れを感じさせる『春告げ魚(はるつげうお)』とも呼ばれます。
巨大な産卵群の一斉放卵は、海面が真っ白になるほどで、
『群来る(ぐんくる)』と呼ばれています。

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「ニシン」の語源には、
「二親」説と「二身」説があります。
「二親」とは父母のことであり、
盆や正月に両親の長寿を祈って食べる魚であったことに由来する説。

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「二身」は身を二つに割いて食べることに由来する説。
他にも、二つに身を割ることから「妊娠」を語源とする説があります。

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「鰊」という漢字は「東の魚」から。
魚に「非(あらず)」。
江戸時代に米のとれない松前藩が代わりにニシンを年貢として徴収した。
「二身」というのがあり、内蔵を取り去り、2つ割りにする。
その身を「にしん」であるとした。

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卵巣を「数の子」としたのは、
秋田でニシンを「カド」といい、その「子」で「かどの子」が訛って
「かずのこ」になり、これに「数の子」という漢字を当てたもの。

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国内のほとんどが北海道でとれています。
江戸時代後期、蝦夷地の産物が脚光を浴び、
唯一の藩である松前藩では年貢の代わりにニシンを納めていました。
それで生まれた漢字が鯡、すなわち「魚に非ず、海の米なり」というものです。
産卵に押し寄せる春ニシンは豊凶を繰り返しながら、
多くが身欠きニシン、干し数の子に加工されました。

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大量に獲れたニシンは食用だけではなく、
脂を絞ったり、搾りかすを「鰊粕」と呼ばれる肥料として北前船で内地に運び、大きな商いをしていたそうです。
これは明治、大正、昭和初期まで続きます。
そして現在は不漁期、国内産では鮮魚はよしとしても加工するほど獲れていない年が続いています。
それを補っているのがロシア、アメリカ、大西洋からのニシンで、
スーパーなどに並ぶ加工品の多くが輸入ものです。

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古くより、総菜、おせちなどで生活には欠かせない魚だったニシン。
これを支えてきたのが北海道の春ニシンです。

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豊漁であった北海道のニシンが1950年代に激減。
一時は幻の魚とさえ言われたこともあるようです。
特に数の子は希少なものとなり、
「黄色いダイヤ(黄色いダイア)」と呼ばれていたこともあります。
この減少した資源は回復しないまま現在にいたっています。
ただ、少ないといっても鮮魚で流通するには十分な量が国内では獲れているようです。
干もの、身欠ニシン、数の子などの加工品原料のほとんどは
アメリカ、カナダ、ロシア、ノルウェーなどからの輸入もの。
数の子などはほとんど総てを輸入に頼っているのが現状です。

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魚偏に希望の希「鯑」と書いて数の子。
カズノコの粒の多さが子孫繁栄を連想させることから、
正月のおせち料理など縁起物として用いられています。

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「鯑」のつくり「希」は「晞」の省略形です。
「晞」には「乾かす」という意味があり、
ニシンの卵を乾燥させて作るカズノコの字に当てられたとも言われています。
また、「希」は「こいねがう」という意味があり、
子孫繁栄を願う思いから「鯑」になったという説もあります。
ちなみに「鯑」は中国の辞書には登録されていない字です。
ニシンが昆布に卵を産みつけたものを「子持昆布」と呼び、
珍味としてそのまま食べたり、寿司ダネとして利用されたりしています。

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生ニシンの握り寿司

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へい、おまち!

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ニシンの干物焼き

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ニシンの開き