黒糖焼酎 朝日酒造
[酒蔵訪問]
鹿児島県 喜界島(きかいじま)には
【喜界島酒造】と【朝日酒造】という2つの黒糖焼酎(こくとうしょうちゅう)の蔵元があります。
大正時代に沖縄から喜界島にきた女性杜氏の
石川すみ子さんが黒糖焼酎の製造を始めたそうです。
大正5年に
【石川酒造所(喜界島酒造)】と【喜禎(きてい)酒造所(朝日酒造)】が創業。
日本で唯一、奄美諸島の島々だけで造る事が許されている蒸留酒、
それが奄美黒糖焼酎です。
2014年 3月 【朝日酒造】さんにお伺いしてきました。
奄美諸島の黒糖焼酎蔵の中では一番古い蔵。
社名でもあり代表銘柄でもある「朝日(あさひ)」は、
喜界島が奄美諸島の中で最も東に位置し、
洋上から現れる朝日を最初に拝めるところから名付けられたそうです。
この日、蔵をご案内してくださったのが
朝日酒造の濱上高史(はまがみたかし)さん。
朝日酒造愛が溢れ出る、面白過ぎる男でした。^^
黒糖焼酎の原料となる黒糖は、
さとうきびを圧搾して出た絞り汁に石灰を入れて煮詰め、
濃縮し、冷ますと固まります。
黒糖の歴史は遡ると、江戸時代の初期になります。
奄美大島出身の直川智(すなおかわち)氏が
中国から技術と苗を奄美大島に持ち帰って製糖を始めたと言われております。
サトウキビは自然の中から必要なものを取り込んで自らの体内に蓄え、
それが黒糖にそのまま濃縮されて移行します。
地域や畑によって、黒糖の味がそれぞれ違う理由は環境にあるわけです。
年貢を黒糖で納めていたというくらい貴重品の黒糖が、
焼酎の原料として使われるようになったのは江戸時代末期。
酒税法で酒類の自家製造が禁じられるまでは、各家庭でも作っていたそうです。
朝日酒造さんで使用している黒糖のほとんどは沖縄県産ですが、
1999年から自社で有機栽培、製糖した
喜界島産黒糖も使用しています。
水に浸した黒糖を蒸気で溶かしアクを丁寧に取る、「溶解」という工程です。
その後、適度な温度まで冷まします。
仕込みに使われる地下水は、ミネラル豊富な超硬水。
喜界島はサンゴ礁が隆起してできた島のため、この水がベースになっています。
現在黒糖焼酎が作られている奄美群島の5島には27の蔵元があり、
約170銘柄の多種多様な黒糖焼酎が作られていますが
この超硬水でなければ喜界島の黒糖焼酎にはならないそうです。
ここまでがさとうきびの仕込みの工程です。
この液体と、この後ご紹介する米麹の一次仕込みを合わせて
二次仕込みに進みます。
タイ米または国産米を洗米、浸漬し、水気を切ります。
お米を蒸して、適度な温度まで冷ました後、
種麹(たねこうじ)をふりかけてよく混ぜ合わせて米麹にしていきます。
白麹や黒麹は腐敗を防ぐクエン酸を生成するので、
高温多湿の九州や沖縄での焼酎、泡盛づくりに欠かせない麹菌です。
米こうじに水と酵母菌を加えて発酵したものがもろみとなります。
「製麹(せいきく)」
約2日間かけて米麹を造ります。
一次仕込み(いちじしこみ)
一次タンクに水と酵母を入れて、そこに米麹を加えます。
その中身がこちらの一次もろみ(酒母 -しゅぼ-)です。
タンクの中では、麹菌が造った酵素がデンプンを糖に変え、
酵母がその糖をアルコールに変えます。
そうして、約7日間。
一週間ほど発酵させた一次もろみに、溶かした黒糖液を二回に分けて加えます。
その1回目を二次仕込み、2回目を三次仕込みと言います。
この工程を経て、黒糖焼酎のもろみになります。
仕込んでから12〜15日間ほど様子を見ながらアルコール発酵を促します。
発酵したもろみを蒸留器に入れ蒸留すると原酒が生まれます。
その後、検定、タンクで貯蔵・熟成、瓶詰め、出荷という流れになります。
詳しい製造工程は
朝日酒造さんのホームページよりご覧いただけます。
http://www.kokuto-asahi.co.jp/shochuflow/
【ラム酒との違い】
黒糖焼酎もラム酒も、どちらもサトウキビ由来の原料を使用した蒸留酒なので、
一見同じようですが造り方が若干違います。
ラム酒は、サトウキビの搾り汁や廃糖蜜だけを単醗酵させて造るお酒で、
酒税法では洋酒の「スピリッツ類」に分類されます。
黒糖焼酎は一次仕込みに米麹、二次仕込みに黒糖(塊)を溶かし入れて
さらに発酵させると言う二段構えの発酵法を取るため、
甘い香りと深いコクが生まれる「本格焼酎」に分類されます。
また酒税法上の分類も異なります。
黒糖焼酎は、単式蒸留焼酎(旧乙類)に分類されますが、
ラム酒は、スピリッツまたはリキュールに分類されます。
黒糖焼酎の原酒を味見させていただけることに!
高史〜!! めちゃいい香りなんだけど、
どう考えても試飲の量、多過ぎるわ〜!!^^
ぷはッ!! 原酒、濃ッ!!!!! うまッ!
蔵見学でこんなに酔ったの初めてだわ。
喜界島の粗糖で作った黄金糖のラスクを高史にもプレゼント!
蔵見学した人の特権。
この
ぷはッ!! 原酒、濃ッ!!!!! うまッ!な
原酒を瓶詰めして購入することができます!
酔って覚えていませんが、蔵人さんと変な飴を持って撮った一枚。。。
そのまま次は、貯蔵タンクのある別蔵へ。
コンサートも出来てしまうほどの、音が綺麗に響く洗練された空間。
ここに蒸留された黒糖焼酎が貯蔵されています。
ここでは、仕込み年代別の試飲をさせていただきました。
ちなみに黒糖を原料に仕込んではいますが、
蒸留酒であるため、糖分はゼロ。
口に含むとサトウキビから造った黒糖のやさしい香りと
米麹由来の芳醇な風味が広がり、奄美の自然と情熱を感じます。
貯蔵タンクで熟成されていく黒糖焼酎は、
眠っているのではなく、時の流れとともに生きています。
ちなみに、喜界島では
黒糖をつまみに黒糖焼酎を飲む楽しみ方も教えていただきました。^^
こちらは、甕壷貯蔵(かめつぼちょぞう)の黒糖焼酎。
貯蔵に使っている甕壺は、創業(1916年)当時に使用しており、
一時使われなくなっていた甕壺を70年ぶりに復活させたものです。
土でできている甕壺での貯蔵は、
甕壺を通した外気との触れ合いによって、
通常のタンク貯蔵とは違う熟成の仕方をするそうです。
また、ひとつひとつ手作りである甕壺は、同じものがなく、
それぞれの個性があり、熟成の仕方にも個性が表れます。
そんな甕壺で熟成された個性あふれる複雑な風味、まろやかさ
こちらからご購入いただけます。
「秘蔵の一品」甕壺貯蔵
この頃には、もう酔っぱらって、顔が白くなってます。。
朝日酒造、高史くん
楽しくて美味しくわかりやすい蔵案内を本当にありがとうございました!!
一番左の『しまっちゅ伝蔵』は喜界島酒造さん
それ以外は
奄美黒糖焼酎 喜界島 朝日酒造さんのラインナップ
2014年9月5日に酢飯屋で開催した鹿児島県 喜界島 特産物試食会でも大盛り上がりでした!
こちらは
奄美黒糖焼酎 たかたろう
原材料は、黒糖(国産)と米麹。
アルコール度数 12度
度数が低めのため、ついつい進んでしまうすっきりとした黒糖焼酎です。
こちらは2023年6月 博多駅での喜界島マルシェでGETした「たかたろう」
減圧蒸留 アルコール度数25度です。
原材料は、黒糖(国産)と米麹(タイ産米)。
「たかたろう」とは、喜界島の古い方言で
「梅雨明けに立ち昇る入道雲」を意味します。
来週には梅雨明けしそうだし、今夜は「たかたろう」いただきます!
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奄美地方だけで製造が認められている黒糖焼酎は、
1953年(昭和28年)に奄美地方が本土復帰する際に、
地域の産業保護のために出された特別措置だそうで、
サトウキビのみを使う黒糖焼酎は、
当時の酒税法でラム酒と同じ高い税率になるため、
黒糖に米麹を加えることになったそうです。
しかし、
現在は、原料の黒糖の大部分を沖縄産のものに頼らざるを得ない状況です。
・奄美地方はザラメ(分蜜糖)
・沖縄は黒糖(含蜜糖)
が国の補助金の対象となり、
奄美地方における黒糖の生産量が激減したのがその原因です。
オーガニックの島を目指す活動
『NPO法人オーガニックアイランド喜界島』の立ち上げメンバーの一人でもある
朝日酒造の四代目、喜禎浩之(きていひろゆき)社長は
できれば地元の黒糖にこだわりたい!と
1999年の夏からサトウキビの自社栽培を開始。
朝日酒造で出来る黒糖焼酎の5,6%ではあるものの
将来的には、もっと増やしていきたいとおっしゃっていました。
ちなみに、
黒糖焼酎蔵の中で原料作り(有機農法でのサトウキビ栽培・純黒糖作り)を
自社農園、自社施設でおこなっているのは朝日酒造さんだけのようです。
喜界島はサンゴ礁でできた島のため
水はけが良く、すべてが地下に浸透するため川ができません。
そのため、島の生活用水、農業用水は地下水によって支えられています。
畑に何を撒くかは、地下水の水質にも関わってくるという理由もあり
朝日酒造さんの自社農園ではオーガニックにこだわり
農薬・除草剤・化学肥料 不使用で育てたサトウキビを
手作業で収穫して製糖しています。
サトウキビは、植え付けから収穫まで1年半かかります。
茎や葉、絞り粕など製造過程で出てくる不要なものは
再び畑に戻して肥料にしています。
その黒糖だけを使った黒糖焼酎づくりにも取り組んでいます。
(2015年7月27日には、有機JAS認証を取得。)
そのお酒が
『陽出る國の銘酒 -ひいずるしまのせえ-』
100%喜界島産の限定ヴィンテージ 有機栽培仕込みです。
【朝日酒造株式会社】
住所:鹿児島県大島郡喜界町湾446-16
ホームページ:http://www.kokuto-asahi.co.jp