ふなずし・フナズシ・鮒寿し・Funa Sushi
鮒寿しを漬けたことのある寿司職人は、どれだけいるのだろう?
普通に修行をして、独立してお店を開く流れなら、鮒寿しを漬ける機会は
ほぼ無いと思います。
しかし、
お寿司のルーツである鮒寿しを知らずして、自分がやりたいお寿司屋はできない。
それが酢飯屋の考え方です。
とはいえ、鮒寿しを漬ける機会なんて、そうそう来ないと思っていた矢先。
堀田雅湖さんより、夢のようなメールが届きました。
『鮒寿しの漬け込みに行きませんか?』
そして、2016年7月下旬
自分でフナズシを漬けてみたい!
という願いが叶いました。
場所は滋賀県彦根市。
鮒寿し、漬け込んできました。
たっぷりの地元産米。
フナズシを漬けるためには必要不可欠なお米を
どんどんどんどん研いでいきます。
どんどんどんどん浸漬(しんせき)していきます。
炊き上がったご飯は飯台で冷ましておきます。
こちらが塩漬けにされた二ゴロブナ(エラと内臓は塩漬け前に除去してあります。)
まずはこの塩を洗い流します。
このあとフナを洗う工程で
金属製歯ブラシのようなものが必須アイテムです。
塩を洗い流したニゴロブナは
すでに綺麗な状態に見えますが
このまま漬け込むと雑菌が乳酸菌とバトルしてしまい
失敗フナズシになることも。
1年以上、常温で保管して乳酸発酵させるのがフナズシの基本ですので
雑菌は無いにこしたことがないわけです。
この部分、エラ蓋が盲点だと僕は思っています。
一見綺麗に掃除してあるように見えますが、
隅から隅まで綺麗にしないとここに雑菌がいるはず。
エラ蓋の奥を覗くと綺麗なオレンジ色の卵が見えました。
ウロコ1枚無い状態の綺麗な皮目ですが
この黒いうねうね。ウロコがびっしりとこの部分に付いていたわけですが
この黒いうねうねしたものをいかに綺麗に取るかで
フナズシの仕上がりが変わるということで
このあと、このうねうねを先ほどの金属ブラシでこすり落としていきます。
一度やるとわかりますが、大変大変根気のいる作業で
全く取れないんです。。
背びれ部分の細かな隙間にも雑菌が残ってはいけないので
ここも念入りに磨いていきます。
腹ビレも
尾ビレも。
脳天部分
口や目の周り
ゴリゴリ磨いていきます。
あのうねうねしていた部分、
こんなに綺麗になるんですね。
綺麗に洗ったフナズシを風通しの良いところで
数時間陰干しします。
時間をかけて磨いたニゴロブナ
ついつい見とれてしまいます。
雑菌が怪しかったエラ蓋もこれだけ綺麗にすれば大丈夫だろう。
あのうねうねをしっかり取らずに干している方もいます。
今回、地元の方々が各々のフナズシを漬け込むという機会に
自分もご一緒させていただいたわけですが
昨年作った美味しいフナズシがあるとのことで
振舞ってくださった尾田さん。
飯(いい)
卵
振舞ってくださる尾田さん。
僕のフナズシの先生です!
僕はハッキリ言って、衝撃を受けました。
フナズシってこんなに美味しいのか!!!!!
ただの臭い珍味。
みたいな扱いをされているフナズシですが
乳酸発酵の旨さの極みです!
これだけの手間をかけて、
さらに何年も寝かせる工程も調理時間とすると
高価になってしまうのは仕方のないこと。
しかし、
この味を味わったとき
ただの臭い珍味ではなく、
上質な果物の香りがする超高級発酵食品ではないか!!!
と心打たれました。
僕は尾田さんの美味しいフナズシの作り方を
じーーーーっと見ていました。
その丁寧な仕込みがこの美味しいフナズシになるんだ。
僕の漬けたフナズシもそれと同等の仕事をしたはず。
きっと美味しい『俺のフナズシ』が出来るに違いない。
そう確信しました。
りんごと合わせて食べて見て。と。
合うーーーーーーーーー!
もう、自分の中でフナズシは
あれときっと合うだろう、あのお酒と合うだろう。
頭の中がぐるぐるし始めました。
フナズシが乾くまで
漬け樽の中に入れ込む縄を編みます。
乾いたニゴロブナの青がなんとも言えない美しさです。
フナズシを干している場所の目の前はこんな感じ。
自然の風と程よく暑い気温がフナズシを
美味しく乾燥させてくれます。
乾いた二ゴロブナを取り込んで
滋賀県の銘酒 岡村本家さんの金亀を手洗いに贅沢に使用。
桶に大きなビニール袋を入れて、そこにごはんを敷き詰めます。
フナを桶に入れる前に
エラの中から、口の中までもお米を詰め込みます。
浸かりムラのないように。
ご飯を詰め込んだニゴロブナを桶に入れて
上からご飯をかぶせていきます。
これを何度も繰り返して、
なるべく隙間のないように詰めていき封をします。
均等に圧がかかるように蓋をして
仕込み終了です。
今回、機会を繋いでくださった、堀田雅湖さん
お米のプレゼントと直前の精米など、何から何までお世話になりました尾田さん、彦根のお母さん青山さん。
美味しいフナズシになることを祈りつつ、
この度は貴重な経験をさせてくださいまして
本当にありがとうございました。
『俺のふなずし』があの中で生きています!
呼び名が乱暴ですね。
『自家製ふなずし』。
ふなずしの身の部分と
それを漬けていた飯(いい)。
ふなずしを小分け真空パックして、
好みの発酵状態で使いたい分だけ使える便利な時代に感謝。
その後は冷凍庫で保管して発酵をストップさせています。
酢飯屋の一品料理のメニューに
フナズシがありましたら是非、お試しくださいませ。
フナズシをパーツごとに分けて、
お客様ごとに適量にてご提供させていただきます。
ちょろっとだけチャレンジしてみたい方、
バクバク食べたい方、色々ですので。
フナの身の部分、
メスとオスの味の好みはあなた次第です。
フナの卵
フナのヒレ
フナズシを漬けていたごはんの部分のみ『飯(いい)』と言います。
フナの頭
通な方々は頭を取り合います。
脳が美味。
鮒寿しは、お寿司の原点と言われる『なれずし』系です。
(ちなみに、そうでないという説も諸説あります。)
古代より湖国近江に伝わる発酵食品で、
子持ちの二ゴロ鮒を塩漬けにした後、
近江米で漬け込み、家伝の製法で1年以上の歳月を経て出来上がります。
近江高島の美しい風土の中にある、喜多品老舗さんの木桶蔵のある
『大溝地区の水辺景観』が日本遺産に指定されました。
豊かな水と自然の中で、『鮒寿し』の発酵食文化は育まれております。
2016年7月別日、
以前よりお世話になっておりました
喜多品(きたしな)十八代目
北村真理子さんにお会いしてフナズシのお話を伺ってきました。
世界ふしぎ発見の郷土寿司関連での出演の際には、
わざわざ、滋賀から東京まで鮒寿しをお持ちくださいました。
鮒寿しの伝統を残すための使命感溢れる喜多品老舗さんです。
ちなみに真理子さんは、
離乳食にも飯(いい)を入れて食べさせていただいていたと言います。
醗酵ごはんを乳児から。
肌がお綺麗な方は、菌友が多い説。
確信がかたまってきます。
到着してすぐにお出しいただいた鮒寿し2種。
左が赤米漬けバージョン(オス)
飯漬け(いいづけ)して柔らかくなってからお腹の部分に赤米を詰めたもの。
梅に似た酸味を感じます。
右が酒粕漬けバージョン(甘子漬けとも呼ばれています。)
飯漬け(いいづけ)してから、酒粕漬けで20日が通常のところを
その粕漬けを3回も漬け変えるという大変手間のかかった一品。
鮒寿しの概念が変わる美味しさで、
初心者の方は、この甘子漬けから入るのがオススメです。
喜多品(きたしな)さんでは、
現代では稀になった木桶仕込みで
自然の営みに任せた鮒寿しづくりを今も尚、続けられております。
3年仕込みを基本とし、ふなずし職人の経験と江戸時代より蔵に棲みつく
良質の乳酸菌が育み、じっくりと熟成させることで
美味しい鮒寿しが生まれます。
独特の香りに酸味と旨味のある味わいは、
お酒の肴やお茶漬けに好まれています。
琵琶湖周辺では、
ハレの日のおもてなし料理や自然の滋養食としても珍重されております。
寿司職人 岡田聖也の名言があります。
『なれずしを臭い臭いと言うでない。この臭いに慣れたとき、本当のなれずしの旨さがわかるものだ。』と。
慣れと熟れをかけた、オヤジギャグである。
琵琶湖の【にごろ鮒】と上質の近江米【高島産コシヒカリ】、【白扇酒造・三年熟成本みりん】。
原材料を厳選し、手間ひまをかけてじっくりと3年熟成させた鮒寿しです。
まろやかさ、爽やかさの増す、滋味深い美味。
そのままお酒の肴に、とろろ昆布と合わせて鮒寿しのお茶漬けに。
四◯◯年鮒寿し 飯漬 姿 鮒寿し
米(滋賀県高島市産)、二ゴロ鮒(琵琶湖産)、塩、味醂、でん粉使用。
鮒が丸ごと一尾、この飯の中に包まれています。
喜多品さんには
通常の鮒寿し以外にも食べやすく考えられた鮒寿しもございます。
四◯◯年鮒寿し 和ごはん(ゆず入り)
鮒寿し
滋賀県高島市産のお米、琵琶湖産の二ゴロ鮒に
ゆず、塩、砂糖、味醂、でん粉で作られた
ゆずが香る食べやすいふなずし。
四◯◯年鮒寿し 甘露漬 姿 鮒寿し
酒粕、二ゴロ鮒(琵琶湖産)、味醂、粕、砂糖、塩、でん粉が原材料。
鮒ズシをさらに粕漬けにすることで、味の奥行きが深く、
甘めの鮒ズシになっています。
甘露漬がスライスされた状態の鮒寿しもあります。
甘露漬 切り落とし鮒寿しも。
【鮒寿し】のお召し上がり方
・鮒についているご飯粒、酒粕(甘露漬)は
洗わずに包丁の背でよく取り除き、
3,4ミリ位の薄さに切り、そのまま。
お好みで生姜醤油やわさび醤油など。
パーツ別 ふなずしの甘露漬け
・お茶碗に頭・尾などを2,3切れ
少量の塩を加え、
熱湯、昆布出汁、煎茶を注ぎ
お好みの調味料を入れていただく。
・保存の場合は漬け粕で包み、ラップなどで密封し
冷蔵庫にいれておけば風味が保てます。
製造者 総本家 喜多品老舗 北村真里子さん
滋賀県高島市勝野1287
全国発送していただけますので、
ぜひ喜多品さんのホームページからご注文を!
みんなで食べて、寿司の歴史を繋げましょう!
フナズシは頭、特に脳の部分がジュワッと脂が出てきて美味しいですよ。
【にごろぶな・ニゴロブナ・似五郎鮒】についてはこちらからどうぞ。
http://www.sumeshiya.com/blog/2016/07/post-1556.html