トビウオすくい
島根県益田市 海に面した町、小浜。
今回はこの地域の伝統漁法、
トビウオのすくい漁に行ってきました。
掬う(すくう)?
そんな金魚すくいみたいな?
海で魚が掬えるなんて、この時はまだ信じていませんでした。
辺りも暗くなってきた8時くらいから出船の準備開始です。
今回お世話になった船は、『水凪(みずなぎ)』。
『人生の楽園』という番組で
地元でかなり有名人になった武藤博道さんの漁船です。
もともとは東京都に勤務されていて、小笠原諸島を担当されていた方。
博道さんの息子さんが酢飯屋のお客様ということもあり、
今回は特別に乗船させていただきました。
船は独自に改装し、夜、トビウオを光に寄せるための、
LEDライトも沢山付けてあります。
船首に黒いシートをかけることで、
船首に当たったLEDの光を反射させて無駄な方向に光がいって、
魚が散らないようにということまで考えられていました。
こちらは、通常のトビウオのすくい漁用のライト。
博道さんの船は上に3個、下に2個付いてます。
『まだまだ漁師見習いだから、光の量でどうにかしなきゃ。』と
ニコニコお話されていました。
獲る気満々を感じる、船上部にあるLEDライト3兄弟。
今回、一緒に出船した、ベテラン漁師さんの船が先に出ました。
雰囲気最高です。
そして、博道さんの船にもエンジンがかかりました。
LEDが眩しい!!
この光だと、海底まで良く見えるそうです。
そして、こちらが今回のメイン漁具、『網(あみ)』です。
僕たちもいざ出港です。
ムラサキウニがたっぷりいます。
船が走り始めてすぐに、網を構えていらっしゃいますが、
すぐ現れるということかな!??
と、、
ええええええええ!!
もう獲ったんですか!?
確かに網の中に一匹のトビウオが!
バタつくトビウオを手づかみして、クーラーボックスへ。
なんと可愛くて綺麗なトビウオ。
網を構え、
するっと掬う。
また獲れた!
簡単そうに見えるのですが、いざ網を入れると
かなりコツがいることに気がつきました。
ベテラン漁師さんのすくい方を遠目に見ていましたが、
簡単そうにバンバン掬ってます。
僕もチャレンジ!
尻尾側から追いかけるのではなく。
トビウオが泳いでくる進行方向を予測して、
トビウオの頭側にあらかじめ網を入れておいて、
入ったらそのまま掬い上げる感じです。
なんどもやって、やっと獲れました。
博道さんは、漁師見習いと言いながらも、
船を操船しながら、辺りを常に見渡しながら、かなりの確立で掬っていました。
旬は夏から秋。
水中で尾ビレを激しく振り速度を上げ、水面上をグライダーのように飛びます。
その距離は、50m〜150mほど。
肉食系の魚(シイラやマグロなど)に追われて空中に逃げますが
空中ではカツオドリが天敵です。
こちらが、トビウオすくいの動画です。
ちなみに沖はもちろんのこと、漁師さん宅の目の前で十分獲れます。
この地域では、
大きくて、形が角ばっているトビウオは『カク』、
小さめで、体が丸い感じのトビウオは『マル』、
と呼ばれています。
【とびうお・トビウオ・飛魚・Flying fish】
ダツ目トビウオ科
太平洋、インド洋、大西洋の亜熱帯から温帯の海に生息する海水魚で、
世界で50種ほど、日本近海でも30種弱ほどと言われています。
そんなにいるのか!!??
美しいトビウオの羽。
風情があるだけでなく、
必要な分だけ1匹1匹獲るというこのスタイルもまた時代に合っています。
3時間ほど経ったでしょうか。
真っ暗な中、こんな静かに漁をするというのは
とても新鮮でエキサイティングでした。
翌日。
海での魚の下処理は、
得意の『海厨房(うみちゅうぼう)』で。
気がつくと、ウミネコ、カモメ、カラスなどに囲まれましたが、
内臓をプレゼントすることで共生できました。
今回、某企業様からの依頼で、
この『SAKAKNIFE(サカナイフ)』を使ってトビウオをさばいていきましたが、
トビウオの下処理には向いていました。
ウロコ取りのアール部分や硬い腹骨を断つのにも良かったです。
そして、海水に浸かりっぱなしでも全く錆びない質の高いステンレス。
無我夢中になって、トビウオをさばき、背開きにしていきました。
トビウオの頭や内臓は、また自然にかえっていきます。
開いたトビウオはまず、海の目の前で天日で乾かしていきます。
ここで、トビウオの旨味を凝縮させます。
ある程度水分が飛んだところで、
ソミュール液(4〜20%の塩水)に秘伝スパイス、調味料を加えて
ピックル液を作っておいたところに12時間ほど漬け込みます。
しっかりと味を入れたら、今度は軽く塩抜きをして味見をします。
塩抜きしたトビウオがこちら。
それを干します。
ちなみに、この時点で相当美味しいトビウオの生干しです。
こちらの燻製器ももちろん、博道さんのお手製です。
蓋にレシピが書かれています。
(しっかり見えませんし、真似してもできないです。)
燻されたトビウオを取り出してみると、
この仕上がり!
再び、これを軽く天日に干します。
その後、常温で熟成させ、延べ4日間かけて丁寧に仕上げられます。
このトビウオの燻製、トビウオはこの辺りの地域では、アゴと呼ばれることから、『あごくん』という名前が博道さんの奥様によって名付けられていました。
見習い漁師さんということや、漁期が限られていること、トビウオにここまで手をかけて少量だけ作られていることから
『気まぐれ漁師のまぼろしのあごくん』という名前が正式名称です。
ちなみに、どこにも販売されていません。
武藤さんとご縁のあった方だけが食べられる特別な一品です。
トビウオの燻製寿司
トビウオの握り寿司 もっちり、ねっとりして美味しいです。
トビウオの握り寿司