飯尾醸造(いいおじょうぞう)・iio-jozo
京都府宮津市には、
僕が尊敬してやまないお酢の銘柄「富士酢」の醸造元、飯尾醸造さんがあります。
日本海の若狭湾に面した本社の建物が見えてくると、同時にお酢のいい香りも漂ってきます。
明治26(1893)年創業の歴史に相応しい重々しさと、どこか粋な感じがする日本家屋です。
日本には現在約400社ほどの食酢メーカーがありますが、
そのうち自社で製造の設備を持っているのは3分の1以下になってしまうそうです。
お酢はお酒から造るわけですが、この飯尾醸造さんは自前で酒蔵まで持っている稀有なお酢の蔵です。
しかもお酒の原料となるお米まで自分たちで作ってるというのですから、驚きです。
そして、無農薬栽培です。
まさに日本でオンリーワンでしょう。
お酢の原料米は古米やクズ米、それに米カスなどを使うのが一般的ですが、
飯尾さんでは1964年から無農薬で育てた新米しか使いません。
50年前から無農薬にこだわるとは、先見の明があるだけでなく、意識の高さには恐れ入ります。
年間使用する60トンの新米は周辺の契約農家さんにお願いしており、
自社購入の3台の田植え機をそうした契約農家のみなさんに譲渡しています。
その上で、JAの3〜3.5倍の値段で買い取っているという話です。
これも中々できるようなことではありません。
2000年からは自分たちで棚田を保有し、2トンのお米も作り始めています。
棚田なので田植えから、雑草取り、稲刈りまではすべて手作業。
だけど、全国にいる富士酢ファンが毎年、田植えや稲刈りを手伝いにやって来るそうです。
さすが愛されるお酢屋さん。
左:飯尾彰浩さん 右:岡田大介
飯尾醸造さんには,
公私ともに5度目の訪問になります。
お酢の蔵元さんに来ることは
もはや、公なのか、私なのかわからなくなってますが^^;。
何度聞いても素晴らしい飯尾醸造さんの酢への向き合い方と製造方針。
JAS規格(日本農林規格)によると、
1リットルのお酢をつくるのに40グラムのお米を使えば「米酢」と表示できるわけですが、
それなのにここの「純米富士酢」は1リットルに200グラムのお米を使ってしまう。
ワンランク上の「富士酢プレミアム」に至っては1リットルに320グラムと桁違い。
富士酢にお米の芳醇な香りや、濃厚なコクと旨みがあるはずです。
しかも、仕込みの工程を聞いて、さらに他のお酢と違うことを痛感しました。
毎年冬が仕込みの時期。
まず、自前で精米機まで持っており、それで玄米を20%削る。
お酢にとって理想的な精米だそうです。
そのお米を洗い、蒸して、製麹室で麹を作ります。
杜氏と蔵人が手で麹菌をまぶしてつくっているのです。
「機械のほうが効率がいいのでしょうが、あえて人の手でつくる昔ながらの製法を続けています」と
5代目当主の飯尾彰浩さんは説明します。
「酢もともろみ」というお酢の素となるお酒を仕込むまでの約100日間、
杜氏さんは泊まり込みで作業をするとのこと。日本酒とほぼ同じ工程です。
静置発酵(表面発酵法)の仕込時のタンク内はこのようになっています。
発酵中の別のタンクから、活発な酢酸菌膜の一部を取り上げ、
タンクの液面に浮かべてやります。
すると3〜5日で、その小さな酢酸菌膜がタンク表面全体を覆います。
この酢酸菌膜が張っている表面だけで、
酢酸発酵が行われていきます。
季節による発酵期間の違い
(夏)4〜5ヶ月(遅い)
(冬)2.5〜3ヶ月(速い)
上層は常に約40℃
下層は常温(夏場25℃・冬場10℃)
比重は
アルコールが軽いため上に
酢のほうが重いためしたに
タンク内では対流がおきます。
上層と下層の品温の差と比重との相乗効果によって
対流のスピードが変わり
夏場と冬場の発酵期間に差が生まれます。
そうして出来上がった酢もともろみを搾り、
そこに種酢という前年につくったお酢を3分の1ずつと軟水を加えて発酵させます。
つまり、毎年つくったお酢は3分の2しか出荷しない計算となります。
しかも、この発酵の仕方がこれまた凄い。
多くのメーカーはタンク内に空気を人工的に送って発酵を促進させる。
これだと8時間から長くても数日で発酵が終わるそうです。
対して、飯尾さんでは酢酸菌が自然発酵するのをじっと待つ「古式・静置発酵」を採用しています。
発酵に約100日と時間はかかるが、アミノ酸が飛ばず、まろやかな味に仕上がるとのこと。
確かに酢蔵に入ると、お酒とお酢の香りが混ざっていて、ゆっくりと発酵しているのがわかります。
タンクは、以前は木桶を使っていたそうですが、30年使うとダメになってしまう。
そこで40年ほど前からステンレス製に変更。
堅牢度を追究するため、医療用のメスに使っているステンレス素材で特注したんだそうです。
ここでもこだわりの突き抜け方が半端ないです。
むしろで包んでいるのは菌が発酵するために必要な酸素を取り込み、
また発酵に最適な40度でタンク内を保ったときにできる水滴を吸い取る役目をしてくれるため。
こうして出来上がったお酢はその後、別のタンクに移されて、250-360日熟成されます。
そしてようやく出荷となるわけで、なんとも道のりは長い。
「こうした造り方は大量生産には向いていません。でも、伝統的な製法や手仕事でなければ生み出せない味もあります。
この日本の味と技を100年先までに受け継ぎ、伝えていくことが私たちの仕事です」。
2015年で40歳の五代目の目線は、遠く未来を見据えています。
つくる現場、そして携わっている人たちに会えて、改めて一生使っていきたいお酢であることを確信しました。
ちなみに、五代目は2016年4月、宮津に自身がプロデュースする寿司店を開くそうです。
丹後で穫れたお米と富士酢で作った酢飯に、丹後の海で獲れた魚を合わせ、丹後の地酒を振る舞う。
江戸前ならぬ「丹後前」とか。
その上、ほかにも美味しい店をそろえて、
「ヨーロッパの美食の都と称されるのがスペインのサン・セバスティアン。
ゆくゆくは丹後を日本のサン・セバスティアンにしたい」という野望を抱く。
こりゃ、ぜひ食べに来ないと!
『手巻キング』でもある飯尾さんと
お酢の試飲と手巻き寿司、しゃぶしゃぶを味わう時間。
富士酢の原料米 無農薬の米ぬか
【純米醸造酢 富士酢】
京都・丹後の山里で農薬を使わずに栽培した米を『米酢』と表示できる量の5倍使用し、
杜氏さんによる本格的な醪(もろみ)を造り、それを一年がかりで発酵、熟成させて造られた酢です。
独特の芳醇なムレ香は、昔ながらの手法で造った、純米酢の証です。
【純米醸造酢 富士酢 PREMIUM】
名称 米酢
原材料名 米
酸度 4.2%
原料と製法にこだわり抜いて生まれたのが『富士酢プレミアム』です。
京都・丹後の山里で農薬を使わずに栽培した米を、『米酢』と表示できる量の8倍使用。
昔ながらの静置発酵をさらに極めた一徹な造りです。
やさしい香り、穏やかな酸味、円熟の旨みの極上純米酢です。
【富士 赤すし酢 砂糖不使用】
酒粕を三年以上寝かせて造られた赤酢と富士酢プレミアムで贅沢に仕上げてあります。
砂糖などの甘みを一切加えない赤すし酢。
すし酢の分量は、米1合につき30〜40mlです。
【富士 手巻きすし酢 砂糖不使用】
酒かすを10年以上寝かせて造られた赤酢と、2種の米酢を取り合わせ、
塩のみで調合されています。
砂糖などの甘味を加えなくても、旨みの濃いすし酢です。
すし酢の分量は米1合につき30〜35mlです。
【赤酢プレミアム 10年熟成】
品名 米酢
原材料 米、酒粕
酸度 四、二%
【富士 しゃぶしゃぶに夢中】
名称 調味酢
原材料名 米酢、醤油(大豆、小麦を含む)、みりん、干し貝柱、昆布
やまつ辻田さんの粉山椒をたっぷりと振って完成するという
しゃぶしゃぶ専用の調味酢です。
紅芋酢(べにいもす)
農薬不使用の国産の紅芋から、発酵と熟成を重ねて造られた紅芋酢。
ポリフェノールの一種、アントシアニンが酢とともに摂取できます。
大さじ1杯(15cc)を水や炭酸水、その他のジュース類などで
8倍以上に薄めて飲むことが推奨されています。
(はちみつ入り紅芋酢は水や炭酸水で4,5倍に薄める)
酢漬けやドレッシングにも抜群です。
株式会社飯尾醸造
京都府宮津市小田宿野373
ホームページ https://www.iio-jozo.co.jp/
電話番号 0772-25-0015
世界シャリサミット2019の様子は
こちらからどうぞ。
http://www.sumeshiya.com/blog/2019/10/2019-25.html