しいら・シイラ・鱪・Coryphaena hippurus
スズキ目 Perciformes
スズキ亜目 Percoidei
シイラ科 Coryphaenidae
シイラ属 Coryphaena
シイラ Coryphaena.hippurus
2023年11月5日 長崎県平戸沖
ペンペンシイラの群れと遭遇。
ペンペンとは薄っぺらいという意味で
シイラの幼魚のことを指します。
幼魚とはいえ、肉食魚特有の猛アタック。
ジグを落とすだけですぐにヒットするほど。
シイラは、世界中の熱帯・温帯海域に分布する表層性の大型肉食魚で、
群れで生活しています。
日本近海でも暖流の影響が強い海域で見られ、
春になると獲物を求め、南から日本の海を北上し
夏から秋にかけては暖流に乗って北海道まで北上するものもいます。
冬になると南の海に戻っていく回遊魚です。
食用に漁獲もされています。
漢字だと魚偏に暑 と書くくらい、
暖かいところが大好きで水温が19度から26度ほどの暖かい海が大好きです。
海の中で暖かいところは、表層。
だからシイラは表層にいるわけです。
水深50m以下ほどの深いところには冷たいので行かないと言われています。
ジャンピング シイラ キャスティング(jumping dolphinfish casting)
主に外洋の表層(深度5〜10m)に生息し、群れを作って泳いでいます。
普段はビュンビュン泳がずゆったり泳いでいますが
獲物を見つけたときや敵に襲われたときなどは、最高時速60km以上で泳ぐことができます。
ハワイではマヒマヒ (mahi-mahi) の名称で高級魚として知られ、
日本でもこの名称で流通しているところもあります。
ルアー釣りで人気の魚でもあります。
シイラはどうして猛スピードを出せるのか?
それは、大きな背ビレが大きく折りたたむことで
水の抵抗を減らすことができたり、
おなかに溝があり、腹鰭を収納できるようになっているから。
水の抵抗を減らすことが猛スピードの秘密というわけです。
シイラは背の全体を覆うように背ビレが付いています。
一般的な魚の背ビレには、鰭条(きじょう)という細長い骨で支えられている部分があるのですが、
シイラはなんと60本ほどの鰭条があり、一般的な魚の2〜3倍の数です。
鰭条をパッと立てたり寝かせたりすることで細かく方向転換することもできます。
分類上は同属のエビスシイラ(Coryphaena equiselis )と共に、
1属2種のみでシイラ科(Coryphaenidae)に分類されています。
シイラの卵は直径およそ1.5mmほど。
稚魚(赤ちゃん)の頃は流れ藻によく集まり、
小さな甲殻類や付着物を食べたり、
流れ藻に紛れて天敵から身を守るため茶色っぽい色をしています。
幼魚の頃から横縞模様になり、
どんどんアクティブな捕食魚として成長し、
ある程度大きくなると、小魚などを食べるため藻から離れて泳ぎ回ります。
岸壁でシイラの幼魚を見かけるとトビウオの幼魚を追いかけていたります。
そしてまた、稚魚時代に過ごした流れ藻に集まる傾向があります。
理由は、たくさんの小魚(獲物)がそこにいることを赤ちゃんの時に見ていたためエサがあることを知っているから。
他のシイラも同様に流れ藻に集まってくるので、シイラ同士の再会などもあるとか。
成魚のトビウオが飛ぶ理由の一つは、このシイラから逃れるためとも言われています。
生後4〜5か月で性成熟します。
成魚は最大で体長2m・体重40kg近くに達します。
寿命は4年程度です。
体は強く側扁して体高が高く、体表は小さな円鱗に覆われています。
シイラのオスの額は成長に従って隆起しだんだんと頭が四角くなります。
背鰭(せびれ)は一つで、55〜65軟条からなり、頭部から尾の直前まで背面のほとんどに及びます。
臀鰭(しりびれ)は25〜31軟条です。
遊泳中は全体的に青みがかった銀色で、
水揚げ直後は背面の体色が青、
全体的にはが緑〜金色で小黒点が点在します。
普段は体全体が青色ですが、
シイラの金色、黄色いは、
興奮したり、警戒したときに出る警戒色(けいかいしょく)です。
仲間に危険を知らせるためとも言われています。(諸説あり)
死後は
色彩が失せ全体的に黒ずんだ体色に変化していきます。
流木などの漂流物の陰に好んで集まる性質があります。
音を恐れず、むしろ、音に反応して寄ってきます。
食性は肉食性で、主にイワシやトビウオなどの小魚を追って捕食する他、
甲殻類やイカなども食べます。
特に大好物と言われているのがトビウオ(トビウオもシイラ同様表層にいる魚)。
水面近くの餌を追って海面から飛び出すくらいの勢いで捕食しながらジャンプすることもあるので
トップウォーター(水面)釣りは、かなり興奮します。
しっかりと血抜きを施したあと、
シイラの血の鮮明な赤がとても印象的でした。
各地に地方名が多い魚種です。
シラ(秋田・富山)
マンビキ・マビキ(宮城・九州西部)
シビトクライ(千葉)
トウヤク(高知西部・神奈川・静岡)
トウヒャク(十百、和歌山・高知)
マンサク(万作、中国地方中西部)
クマビキ(高知)
ネコヅラ(猫面、九州)
マンビカー・フーヌイユ(沖縄)
『シイラ』の名が初めて文献に現れるのは
室町時代の辞書『温故知新書』(文明十六年 - 1484年成立)です。
その後、『節用集』や『日葡辞書』などに収録されています。
シイラの塩乾物として都で献上品とされたものが『クマビキ』(くま引、熊引、九万疋)。
室町時代の文献に記載があります。
『マンサク』は、
実らず籾殻だけの稲穂のことを俗に『粃(しいな)』(地方によっては「しいら」)と
呼ぶことから、縁起の良い「(豊年)万作」に言い換えたといわれています。
『シビトクライ』・『シビトバタ』などは、
浮遊物に集まる習性から水死体にも集まると言われることに由来しています。。。
中国語の標準名は『鯕鰍(チーチォウ、qíqiū)』。
台湾ではその外観から『鬼頭刀(台湾語 クイタウトー)』と呼ばれています。
英名は、イルカのように泳ぐことから『Dolphin fish』 、
スペイン語で『Dorado(黄金)』は、釣り上げた時に金色に光ることに由来しています。
ハワイでは『マヒマヒ (mahi-mahi)』 強い強い という意味で呼ばれています。
シイラの獲り方は、
漂流物の陰に集まる性質に注目し、シイラを漁獲することに特化した
『シイラ漬漁業』(単に「シイラ漬け」とも)と呼ばれる巻網漁の一種が行われています。
シイラ漬け漁による水揚げが多いのは高知県です。
俊敏な大型肉食魚で、筋肉質で大変引きが強いことから、
外洋での釣りや引き縄(トローリング)の対象として人気が高いです。
ゴミや流木、鳥山(海鳥が小魚を捕りに集まった状態)などは、シイラがいるポイントです。
その他、延縄や定置網などでも漁獲されます。
ちなみに、鳥山(とりやま)はこんな感じです。
この光景を見るだけで、釣り人は、
もう、竿を振りたくて仕方がありません。
シイラは白身ではなく、赤身の魚。
ですが、色はちょっと薄いです。
旬は夏(7〜9月頃)とされていますが、秋冬は脂がのって旨味が増します。
筋肉質で脂質が少ないことから鮮度保持が難しく、傷みが早いため、
日本では全国的な流通はあまりしていませんが、
旬の時期にスーパーマーケットなどで切り身が販売される地域も多くあります。
産地以外では他国に比べて味の評価が低く、
魚肉練り製品の原料に使われることが多いですが、
塩焼き、フライ、ムニエル、バター焼き、干物、くさやなどで美味しく食べられます。
【シイラのソテー醤油麹ソースで】
刺身、たたき、すしなどとして、生食も一般的に行われています。
シイラの握りずし
シイラの握りずし
シイラの握りずし
シイラの握りずし
シイラの握りずし
卵巣などももちろん食べられます。
ハワイでは高級魚として扱われ、マヒマヒのフライやソテーは名物料理の一つです。
サンドイッチなどにも用いられています。
台湾で『鬼頭刀』は、つみれ、スープ、鉄板焼き、蒸し物などにして食べられています。
東海岸を中心によく捕獲され、特に蘭嶼のタオ族の漁民は、アラヨと呼んで、神の魚と考えており、
重要な食用魚となっています。
フィリピンでは干物も作られています。
トローリングの獲物としても人気があるので、その際様々な料理として食べられる事があります。
暖海の表層を泳ぐシイラは、体表に毒(腸炎ビブリオ菌や表皮粘液毒)を持つと言われて怖がられていますが、
海を泳ぐ魚ならば、シイラに限らずほぼすべての魚の体表にある菌や毒なので
真水で洗って、しっかりとした下処理ができれば食中毒になることはまずありません。
下処理用まな板と仕上げ用まな板を別にするのをオススメします。
しっかり処理しないと、生食時は人によっては多量に食べると吐き気や下痢などの症状を催す場合もあります。
干し芋のように見えますが、
高知県安芸市手結産のシイラを小松隆雄さんがミリン漬けにして天日干しした
「シイラミリン」です。
原材料は
シイラ、ごま、みりん、佐藤、醤油、食塩