ちんあなご・チンアナゴ・狆穴子・Heteroconger hassi
[海の生き物]
動物界 Animalia
脊索動物門 Chordata
脊椎動物亜門 Vertebrata
条鰭綱 Actinopterygii
新鰭亜綱 Neopterygii
カライワシ上目 Elopomorpha
ウナギ目 Anguilliformes
アナゴ亜目 Congroidei
アナゴ科 Congridae
チンアナゴ亜科 Heterocongrinae
チンアナゴ属 Heteroconger
チンアナゴ Heteroconger.hassi
チンアナゴは、全長約40cmほどのアナゴの仲間です。
流れの強い珊瑚礁外縁部の砂底に生息しています。
頭部から体の半分程度を外に出して潮の流れに乗ってくる動物プランクトンを捕食しています。
プランクトン飼育の難しい小規模環境では、
冷凍イサザアミ(ホワイトシュリンプ)を与えます。
餌を目で見て確認し、体をのばして1つずつ丁寧に捕食します。
砂の中へは、蛇行しながら潜っています。
野生下での穴の深さは80cmを超えることもあります。
穴は体表の粘液で固めているので、
チンアナゴが穴の中を移動しても、穴の形が崩れることはありません。
胴体は同じ軌道を通るだけです。
肛門は体の中央にあり、排便をするときには、
穴の中ではせず、肛門まで出てきて行います。
一度砂の中に潜ると、砂の上に全身を出すことはほとんどありません。
新たな場所の砂に入る場合は、
尾から体をくねらせるようにして穴を作りながら入って行きます。
体は灰白色で多数の暗色点を持ち、
鰓孔周辺、躯幹部及び肛門周辺に大きな黒色斑があります。
上唇、胸鰭の形状は同属のゼブラアナゴと同様です。
ゼブラアナゴの上唇の左右の遊離縁は前方でつながり、胸鰭はありません。
体の下部は常時砂に入っており、敵が近づくと全身を穴にひっこめて隠れます。
Q:チンアナゴは、どうして『チン』なのですか?
A:正面から見た丸顔と、大きな丸い目が、標準和名の日本の犬種
『狆(チン)』に似ているからです。
ちなみに英名は『spotted garden eel』
spotted は、斑点のあるという意味
garden eel は、砂底から頭を出す生態が庭の草木が生えることに似ていることからそう呼ばれています。
中国語名は哈氏異康吉鰻です。
【チンアナゴからロボット開発!】
潜砂行動(せんさこうどう)が、災害救助に役立つ!?
山口県下関市にある、市立しものせき『海響館(かいきょうかん)』が考案した、
透明なポリマーでの展示からわかったチンアナゴの砂の中の動きをヒントに、
東京工業大学の塚越准教授の研究室でロボット開発が行われました。
土砂災害の救助作業や、土中の環境観測作業などでは、
土中を効率よく進んで情報収集を行える装置の必要性が高まっています。
これまで土・砂・泥などの粒子や流体で満たされた閉塞空間を自由に移動する装置として、
様々な提案がされてきました。
しかし、これらの方式では探査機に接続されている通信・エネルギー供給用のケーブルが
土中で磨耗抵抗となるため、深い場所までなかなか進むことができませんでした。
この問題を解決する移動法として、チンアナゴの潜砂行動をヒントに、
ケーブル自体を機動的に蛇行させながら体幹全体で推進力を生成する方法に注目しました。
チンアナゴの潜砂行動をよく観察すると、
進行方向に対して前から後ろに向かって横波を伝えながら進んでいることが確認できました。
尾の先端は、高周波数の積極的な動作をしているのに対し、
胴体部は同じ軌道を通るような動作が見られ、
先端部と胴体部で異なる蛇行動作をしていることが明らかとなりました。
生物の動きから、生体のもつ優れた機能や形状を模倣し、
工学・医療分野に応用することを『バイオミメティクス』といいます。
素材、機械、医療、環境、エネルギー、交通システムなど多様な分野に貢献するものとして期待され、
生物学と工学(材料、分子、機械、ロボットなど)など異分野の技術・知見の連携が必要です。
『寿司職人と生物と工学』を連携させることで
新たなバイオミメティクスが生まれる可能性は大いにあると感じています。
魚をさばく調理工程などに、その肝があると思います。
寿司職人の高度な解体、解剖技術が、様々な分野に貢献出来る日が来ることを願っております。
すべては、ひとつです。
We are all one.
同属の『ニシキアナゴ』などと共に水族館で飼育されることも多いです。