日本版サウナの原型『地家室の石風呂』
[記録]
山口県周防大島町
【石風呂と瀬戸内文化】について書かれています。
石風呂じゃ石積みや岩窟の空洞を利用した熱気浴施設です。
石風呂のような熱気浴は北方系の寒冷な地域にはじまる入浴文化です。
日本版サウナの原型じゃないか!
こちらが【地家室の石風呂】 町指定有形民俗文化財です。
日本には韓国を経由して伝わったと思われ、
朝鮮半島では現在も日本と同じ様式の石風呂が利用されています。
日本人は風呂好きといいます。
日本は湿度が高く、夏と冬の寒暖の差が激しい気候です。
同時に水にも恵まれ、火山国で温泉も多いのです。
こうした日本の風土と大陸からの様々な入浴文化の伝播により、
世界に類をみない多様な入浴文化をうみだしました。
そうしたなか石風呂は日本でも瀬戸内地方を中心に発達しました。
瀬戸内地方は火山がなく、身近に温泉がありません。
石風呂は温泉湯治と同じく長期的に入浴をくりかえして
病気予防や疲労回復、病気治療に効果があったのです。
石風呂は地域共同体で管理運営された共同入浴施設です。
村人同志が対等に炉を囲んで煮炊きやお茶を沸かし、一日中楽しみました。
瀬戸内の白砂青松の浜は波穏やかな海の風景を眺めながら、
火を中心とした語らいの空間は、憩いやコミュニケーションの場でもありました。
また、瀬戸内地方は花崗岩地帯で、遠浅の海には塩田が傾斜地には棚田が発達しました。
瀬戸内の自然利用には石積が生活技術として不可欠で、石積文化が発達します。
石風呂にも瀬戸内の石積文化が利用されたのです。
そして、石風呂入浴を通じて石や海草などの自然の不可思議な力を体感したのです。
石風呂は温泉と同じように弘法大師とか薬師仏を祀り、
入浴と同時に神仏の加護により精神的な安定も得られました。
日本人の入浴が現在のように盛んになるのは宗教の力が大きかったのです。
石風呂は宗教と関わりが深く、それだけ古い技術を伝える入浴施設といえるのです。
このように石風呂は瀬戸内地方の歴史や社会、文化と深く関わっています。
石風呂を通じて日本の沿岸文化や西日本文化、大陸との交流といった、
瀬戸内地方の複合的で多様な文化を知ることができるのです。
石風呂は瀬戸内地域を中心とした、伝統的な蒸気・熱気欲施設です。
その中心は山口県の大島郡及び佐波川流域で、東和地区には18カ所に点在していましたが、
焚かれたのは第二次世界大戦頃までで、現在では多くの石風呂が破損しています。
その中で、地家室の石風呂は現在でも使用されている数少ない完存な石風呂の一つです。
また、周辺の関連施設や環境も比較的よく残されています。
東和地区の石風呂は
・岩盤を掘った岩窟式
・岩陰を利用し側面を石積みにした折衷式
・石積み式
の三種類の構造に分類できます。
地家室の石風呂は折衷式で、町内では極めて数が少なく、
生活技術史的観点からも貴重な石風呂といえます。
東和地区は、平地が乏しく段々畑での耕作が多く、
腰など体をいためることが多かったようです。
そのため、作業前に体を慣らしたり、作業後の疲労を癒し、整えることが必要でした。
石風呂は、島のこうした特色ある地形や生産構造のなかで、普及し発達してきたわけです。
さらに、石風呂は地区の共同管理運営(石風呂講)が原則で、
村落社会の地縁的つながり、つまり講的な横の結びつきを特色とする当地域の村落構造の歴史を伝える
民俗文化財として、資料的価値が高く重要です。
地家室石風呂保存会
石風呂のすぐ横には【石風呂水掛地蔵尊】があります。