まはぜ・マハゼ・真鯊・Acanthogobius flavimanus
スズキ目
ハゼ亜目
ハゼ科
マハゼ属
マハゼ
全長は15cm〜28cmほどになる魚です。
頭部はやや縦扁するものの
体は細長い円筒形です。
吻は前方に丸く突き出ていて、上顎がわずかに下顎より前に出ています。
マハゼの顔
眼は綺麗な緑色をしています。
マハゼの口
細かな歯はありますが、刺さるほど鋭利ではないです。
マハゼのエラ蓋
ハゼのエラのチラリズム。
血管フェチの方にはたまらない、顎裏の血管
背中側は灰褐色で、体側には黒い斑点が並び縞状です。
左が第一背鰭、右が第二背鰭
腹側は白く、鈍い光沢があります。
マハゼの吸盤?
ではなく、腹鰭です。
腹鰭がまるくなって吸盤のような役割をしています。
この機能美よ。
2つの腹ビレが癒着して1つの吸盤状になっており、
この腹ビレで水底の石や壁に貼りつくことができます。
そのため、流れの速い川でも生息できるのが特徴です。
背鰭と尾鰭には軟条に沿って黒い点が点線状に並んでいます。
第二背鰭
臀鰭(しりビレ)は透明で、
先端から少し透明感のある薄オレンジ色があります。
尾鰭に暗色の小斑点が列状に並んでいます。
尾鰭の下方は斑点がなく灰色がかっています。
若魚は第一背鰭の後半部に黒い斑点がありますが、成長するにつれて目立たなくなります。
波の穏やかな内湾や汽水域の砂泥底や砂地に生息していますが、
若魚は、ごく浅い海岸や川の純淡水域にも進入し水深50mほどまで生息しています。
水質汚染にも強く、都市部の港湾にも多く生息しています。
砂泥底に腹をつけて生活する底生魚で、
胸鰭を羽ばたかせて泳ぎます。
食性は肉食性が強く、
多毛類(ゴカイやイソメなど)、甲殻類、貝類、小魚などを貪欲に捕食しますが、藻類を食べることもあります。
天敵はサギやマゴチなどです。
マハゼの生活史は、産卵期は1月から5月にかけてで、南の地方ほど早いです。
オスは砂泥底にY字型の穴を掘り、メスを呼び込んで穴の壁に産卵を促します。
産卵・放精が終わった後もオスは巣に残り、孵化するまで卵を守ります。
孵化した稚魚は遊泳生活をし、プランクトンを捕食しながら成長しますが、全長2cmほどで底生生活に移ります。
夏には全長5cm〜10cmほどの若い個体が海岸のごく浅い所や淡水域にも現れます。
これらの若魚は小動物を捕食しながら急速に成長して、冬になると次第に沿岸の深場へ移動します。
春になると再び浅場にやってきて産卵しますが、産卵後はオス・メスとも死んでしまいます。
通常寿命は1年ですが、越冬してさらに大きく成長し(25cm前後)、2年で成熟・産卵する個体もいます。
都市部の沿岸や河川にも多く生息している身近な魚で、
釣りやすく、味もよく、食用や釣りの対象として人気が高いです。
鮮魚が市場に流通することは少ないですが、マハゼを利用した料理は各地の食文化に多く見られます。
ほぼ年中漁獲されますが、旬は秋から冬にかけてです。
美味な白身魚で、天ぷら、唐揚げ、刺身、吸い物の椀種、煮付け、甘露煮など様々な料理で食べられます。
宮城県仙台市など一部の地方では、ハゼの焼き干し(焼きハゼ)は伝統的な雑煮の出汁として使われます。
マハゼ属は、東アジアから計7種の同族種が知られていて、そのうち4種が日本に分布しています。
ウロハゼと同所的に見られますが、ウロハゼはマハゼよりも太く短い体形をしていて、
下顎が前に出ていて、鱗が大きく、腹面が灰色を帯びているので区別できます。
ハゼクチ
全長は50cmを超える、日本に分布するハゼ類の中では最大種のハゼです。
マハゼに似ていますが尾鰭に斑点がありません。
中国、朝鮮半島のほか日本では有明海と八代海だけに分布しています。
アシシロハゼ
全長10cmほど。マハゼに似ていますが、
鱗が大きいこと、体側に白の横しま模様があることなどで区別できます。
オスは第1背鰭の軟条が糸状に伸びています。
分布域・生息域はマハゼと同様ですが、汽水域に多いです。漁獲されて佃煮などに利用されています。
ミナミアシシロハゼ
奄美大島以南の南西諸島に分布していて、アシシロハゼとは分布が重なりません。
オスの第1背鰭軟条は糸状に伸びておらず、日本の環境省が作成した汽水・淡水魚類レッドリストでは、
2000年版から絶滅危惧II類(VU)に指定されています。