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いのこづち・イノコヅチ・猪子槌・Achyranthes bidentata var.japonica

[植物]


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植物界
被子植物
真正双子葉類
コア真正双子葉類
ナデシコ目
ヒユ科
イノコヅチ属
イノコヅチ

日のあまり当たらない場所に生える多年草です。

古来より、北海道以外の日本各地にある植物で、
林、山、路傍、藪などいたるところに生えています。
イノコヅチとよばれる植物は、
細かくは日陰に生えるヒカゲイノコヅチ(日陰猪子槌)と、
日向を好むヒナタイノコヅチ(日向猪子槌)の2種類に分かれていて、
普段よく目にするイノコヅチは、ヒカゲイノコヅチのほうです。

和名のイノコヅチの由来は、
茎の節が膨らんでいて、猪子の膝のように見えることから、これを槌に見立ててこの名がつきました。
他にも、フシダカ、コマノヒザとも呼ばれたりします。
魚同様、正式名称で統一していかないと大変なことになってしまいそうです。
平安時代中期に編纂された『延喜式』には、
「こまのひざ」「ふしだか」という名前での記載が見られます。
日本の地方によっては、サシグサ、ノサバリコ、ヌスビトグサ、モノグルイという方言名でもよばれているので
イノコヅチで統一をお願いしたいです。

イノコヅチの根を乾燥させて作った漢方薬(生薬)を牛膝(ごしつ)といい、
利尿、強精、通精、通経薬とされています。
牛膝は、秋に根を掘り採って天日乾燥して調製されます。
民間療法では、生理痛や関節痛に、牛膝1日 5グラムを400ccの水で煎じて、3回に分けて服用する用法が知られています。
ただし、俗間では堕胎薬としても使われたこともあったことなどから妊婦への服用は禁忌とされています。
近年の研究によっても、流産を促す恐れがあるので妊婦は食べてはいけない草になりました。

第二次世界大戦中の日本では
戦時下の食糧難で食べられる雑草として「夏の七草」の一つとして食用を推奨されていました。
足腰を強くする野草ということで、このとき選ばれたスベリヒユやイヌビユとともに、アクが少なく、
サラダや調理して一般の野菜同等に使うことができます。
ヒユ科なので、ほうれん草の親戚です。

ちなみに
昆虫変態ホルモンが含まれていて、
虫がこれを食べてホルモンを手に入れて成虫になります。

茎の断面は四角形で節が固く、草丈は、高さは1m近くになります。
葉は対生して、先の尖っている楕円形で、長さは15cmほどで、両面に毛があります。
ヒナタイノコヅチよりも、葉質は薄く、毛は少ないです。

花期は夏から秋(8〜9月)にかけてで、
茎の上部または葉腋から10〜20cmの細長い穂状花序を出して、目立たない緑色の小花を多くつけます。
小さく尖った苞葉は花の基部に2個あり、果実の熟後も小苞となって果実の外側に2本のとげ状となって残り、
外側に向かって少し反り返って動物や衣服に付着し、それによって種子を散布します。
果実は胞果で、花後に閉じた花被片(萼片)に包まれて、果軸に下向きにぴったりついています。
長楕円形の果実(胞果)の果皮は膜質で、中に種子が1個あります。