さよりやどりむし・サヨリヤドリムシ・Mothocya parvostis・Mothocya sajori
[海の生き物]
サヨリヤドリムシは、
等脚目に属する魚の寄生虫であるウオノエ(Cymothoidae)科の一つです。
漢字で「魚の餌(うおのえ)」と書きます。
種類や宿主などについては、いまだ不明な点が多い寄生虫の一つです。
アジやタイ、サヨリなどの魚の口内やえら、体表面にへばりつきいて体液を吸って生きています。
今回は、サヨリのエラに宿っている「サヨリヤドリムシ」。
エラの隙間にいるのが確認できます。
引っ張り出してみるとこんな感じ。
そして、逆サイドにも発見。
サイズや形が微妙に異なるようにも見えます。
ウオノエ類の寄生は、
魚類に、貧血・栄養障害・発育阻害などを引き起こすため、
本科による漁業対象魚種の被害が世界各地で報告されています。
こういう寄生虫のことは、基本的に気持ち悪がられるので、
飲食店をメインでしていた頃は、
なかなか発信しづらいことではありましたが、
この真実は、真実として記録しておきたいと思い、
こうしてブログを書いているわけです。
こちらは、目黒寄生虫博物館で撮影したもの。
今回のサヨリヤドリムシは成体で、体長1~2cm程、
乳白色をしています。
6~7月に親虫から出た幼生は自由遊泳生活を経た後、
サヨリの体表、次いで鰓腔内での寄生生活を始めます。
カワイイと見るか、気持ち悪いと捉えるかはあなた次第です。
通常、左右いずれかの鰓腔内に1個体が寄生しますが、
今回のように、
両側の鰓腔内に雌雄1個体ずつ寄生するものもあります。
はじめは雄雌の区別が決まっておらず、
先にサヨリの口に入った方がメスになり、
後から入ってきた方がオスになって繁殖活動をします。
必ずメスとオスが出会える仕組みというか、
状況に合わせて雌雄を変化させるという
マッチングアプリとか必要ない生態。
こうして、効率的に繁殖をしていきます。
こちらの黒っぽいほうがオス。
乳白色のほうがメス。
人間には無害で、食しても人に寄生することはないことが確認されています。
裏返して見ると、右側のメスのお腹が膨らんでいるのが確認できます。
どうやらお腹に卵を抱えているようです。
卵というか、もう孵化しているようにも見えます。
サヨリヤドリムシの赤ちゃんたちの眼がたくさん確認できますね。
母子ともに亡くなってしまっている様子です。
パンパンに膨れた「育房」と呼ばれるお腹の袋に切れ目を入れると、
幼体(赤ちゃん)たちが飛び出してきました。
幼体は十分に育つと本来であれば海中で、
育房からハッチアウトして海中に泳ぎだします。
この幼体(マンカ)が泳ぎ回っているうちに、
サヨリの体表に貼り付くことが出来ると寄生します。
サヨリへの寄生に成功した寄生虫は、しばらく体表にとどまり、
すべての寄生虫がオスとなります。
しばらくすると一部の寄生虫がサヨリのエラへと寄生場所を移します。
エラへの寄生に成功した個体は、性転換してオスからメスへと変化します。
体表に残った寄生虫の一部たちの中で、メス争奪戦のごとく
エラへの侵入競争が始まります。
勝者の一匹だけがメスと交尾をし、
また次世代の寄生虫幼体が生まれるという生活史になっています。
「サヨリ」ブログはこちらからどうぞ。
http://www.sumeshiya.com/blog/2017/03/post-2360.html