ヤマロク醤油
木桶の王国 香川県 小豆島
島に20軒あるという醤油蔵の一つ『ヤマロク醤油』さんを訪ねてきました。
明治の最盛期には、
大小約400軒の醤油メーカーが島内にあったというから凄い。
そしてさらに凄いのが、タンクづくりが主流の今、
昔ながらの木桶の天然醸造で醤油をつくっているところが
いまだに残っていること。
全国にある醤油メーカーで、
木桶でつくっているところは全体のわずか1%足らず。
そのなんと2/3が小豆島に残っているのです!
ヤマロク醤油さんはそのひとつです。
蔵の中をのぞくと、木桶がずらり。
こんな圧巻の光景は初めてです。
外と蔵の中とでは空気のたたずまいががらっと変わり、
静かな中に優しい醤油の香りが辺り一面に漂っていて、
なんとも幸せな気分にさせてくれます。
100年以上前に建てられた蔵は国の登録有形文化財に指定されています。
100年以上経った桶は見た目にはボロボロです。
でも、この古びた蔵や桶の至るところに
100種類以上の酵母菌や乳酸菌たちが暮らしているという話。
ヤマロクさんの醤油は濃厚でコクがあってまろやか、
旨味が際立っているのが特徴ですが、
この菌たちのお陰であの個性的な味がつくられるわけです。
年末から3月にかけてが仕込み。
国内産丸大豆と国内産小麦でつくった醤油麹に
塩水を混ぜてゆっくりと発酵させ、通常2年半熟成させる。
こうして出来上がったもろみを搾ると醤油になります。
ヤマロクさんでは、その搾った醤油をもう一度桶に戻し、
再び麹を仕込んでトータル4年半熟成させる「再仕込み製法」の醤油もつくっています。
原料も歳月も2倍。
濃厚なはずです。
タンクだと3〜6ヶ月で出来上がるので、道のりは大きく違います。
でも、先人たちはこうして醤油をつくってきたわけです。
この間は菌たちの成せるままに任せ、
ヤマロクさんでは一切桶の中を混ぜることもしません。
作り手はじっくりと静かに見守るだけ。
確かに生産効率は悪いけれど、
本物の味を追究するにはこうした忍耐と辛抱が必要なのですね。
ところが、この木桶を作れる職人さんが今やいなくなりつつあります。
桶がなくなれば自分たちが理想とする醤油づくりが出来なくなると危機感をもったヤマロク醤油五代目の山本康夫さんは、
なんと2013年から自分で桶をつくり始めたのです。
この発想と行動力には驚きました。
奈良県吉野の天然杉に、小豆島で採れた竹でタガを編んで。
山本さんは地元の大工さんとともに桶屋に修行し、
その後失敗を繰り返しながら試行錯誤の末、
ようやく100年持つ桶を完成させました。
『本物の醤油を残していかないと和食は大変なことになる』。
和食の未来を案ずる山本さんの強い志に感動です。
この話を聞いて、自分がつくりたいと思う寿司が
この先つくれなくなるかもしれないという不安を同時に持ちました。
山本イズムを寿司業界にも反映させていくために
郷土寿司プロジェクトをしっかりと進めていきたいと思います。
ヤマロクさんの再仕込み醤油が冷蔵庫にある安心感は、
料理人だけでなく、今後はご家庭にももっともっと広がっていくでしょうね。
この一滴の価値は、嬉し涙、幸せな時に出る涙の一滴に匹敵する一滴です。
写真右:再仕込み醤油『鶴醤(つるびしお)』
写真左:ヤマロク醤油さんたちが自分たちで製作した記念すべき、最初の新桶にて醸した初搾り
こちらは普段からお世話になっている
天然醸造 三十二石大杉樽仕込み
鶴醤(つるびしお)
再仕込醤油
名称 さいしこみしょうゆ(本醸造)
原材料名 大豆、小麦、食塩
再仕込み醤油『鶴醤』は、国産の丸大豆と小麦で作った麹を、
天日塩と地下水の中に仕込み、約一年半熟成して出来た生醤油の中へ、
再度、麹を仕込んで造ります。
約二倍の原料と歳月をかけた醤油です。
新桶初搾り 2016
天然醸造しょうゆ
国産丸大豆 100%
国産小麦 100%
天日塩 100%
熟成期間 2年6ヶ月(2014年1月27日仕込み)
No. 1307 /3360
名称 こいくちしょうゆ(本醸造)
原材料名 大豆、小麦、食塩
子や孫の世代に木桶仕込みの本物の醤油を残し伝えるための
『木桶職人復活プロジェクト』
職人醤油の高橋万太郎くんもバッチリ映ってます!
製造者 ヤマロク醤油株式会社
香川県小豆郡小豆島町安田甲1607
TEL.0879-82-0666